研究実績の概要 |
本課題は、軽金属(Li+, Na+, Mg2+, Ca2+)と水素貯蔵型π系ジアミン配位子からなるハイブッリド型錯体を創出することを目的とした。本研究では、異なる電荷C/半径rを有するLi+(1.4)、Na+(0.86)、Mg2+(2.3)、Ca2+(1.6)を用い、溶液内状態及びPHERへ与える金属種の効果を明らかにした。各過塩素酸塩(Li+, Na+, Mg2+, Ca2+)と三当量opdaをTHF中で混合後、溶媒を留去することで白色粉末を得た。また再結晶化により[Li3(opda)2(ClO4)(H2O)6] (ClO4)2(opda)6及び[Ca(opda)3(ClO4)2]の無色結晶を得た。Li+錯体では、opdaがLi+へ単座で配位した構造を形成する一方、Ca2+に対しては三分子のopdaがキレート配位した。これらの構造の違いは金属種のC/rに起因していると考えられる。IRスペクトル測定から、Na+は錯体を形成しないのに対し、Mg2+はCa2+と類似した錯形成が示唆された。Mn+/3opda/ClO4に対し 300 nm光を照射したところ、opdaでは0.083当量(24 h)の水素が、Li+ or Na+/3opda/ClO4-からは、opdaに近い0.074、0.076当量の水素が発生し、金属イオンの効果が低いことが示唆された。一方、Mg2+ or Ca2+/3opda/ClO4-においては、それぞれ0.120, 0.110当量の水素が発生し、opdaは比較的高いC/rを有するM2+と相対的に強く相互作用すると共に、光水素発生効率にもこの傾向が反映されることを明らかにした。以上の結果は、より効率的なの水素発生反応を構築する上で有用な知見であると考える。
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