研究実績の概要 |
本研究では、有機物質における電子輸送の新しいメカニズムを提案し、有機ホウ素化合物を牙ンとした高性能n型有機半導体開発への展開を図る。この提案は、申請者が最近見出した「あるホウ素化合物が、還元と再酸化により可逆にB-B 結合を生成する」という発見(JACS 2011, 133, 11058)に端を発する。このホウ素特有の反応性の本質に基づくと、ホウ素の空軌道を重ね合わせたアレイを構築した場合、そこに注入された電子は、非常に小さな活性化エネルギーで移動する可能性が高い。さらに、これを固体状態で実現すれば、優れたn型半導体特性が期待できる。 このような観点から、平成26年度は、新規含ホウ素π電子系化合物の合成研究を行った。具体的には、ディスクリートな環状電子移動システムのモデル化合物として、ホウ素六置換ベンゼン誘導体を設計した。その前駆体化合物の合成検討中、偶然にも、全く新しい含ホウ素π電子系骨格形成反応を見いだした。本反応の基質適用性は良好であり、他の手法では合成が困難な種々の含ホウ素π電子系化合物を合成すことに成功した。
|