研究課題/領域番号 |
26620059
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
寺西 利治 京都大学, 化学研究所, 教授 (50262598)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コロイド / パラジウム / 多面体 / 水素吸蔵 |
研究実績の概要 |
金属ナノ粒子は、水素吸蔵量、水素の吸蔵/放出温度の低減、生成水素化物の安定性等の観点から、次世代水素吸蔵材料として有望である。本研究では、単結晶正六面体、単結晶正八面体、多重双晶正二十面体、多結晶球状Pdナノ粒子の水素吸蔵特性を検討し、ナノ粒子の結晶性・露出結晶面・形状・粒径が水素吸蔵特性に及ぼす影響を明らかにする。また、in-situ中性子回折測定により、各Pdナノ粒子中における水素-水素相関を導出し、吸蔵機構を解明する。 本年度は、Pd黒、1種類の多結晶球状Pdナノ粒子(3.9 nm)、6種類の単結晶正六面体Pdナノ粒子(6.9、10、12、15、21、39 nm)の水素吸蔵特性と結晶構造変化について検討した。単結晶正六面体Pdナノ粒子は、ポリビニルピロリドン(PVP)を保護剤とし、Pd(II)イオンのポリオール還元により合成した。水素圧力組成等温線測定の結果、Pdナノ粒子の水素吸蔵量はPd黒と同等であるが、一旦吸蔵された水素原子はPdナノ粒子中で粒径が小さいほど極めて安定に存在することが分かった。水素化物生成のエントロピー変化およびエンタルビー変化からも、10 nm以下のナノ粒子では特異な水素吸蔵・放出特性を示すことが分かった。すなわち、強束縛水素が存在する臨界サイズは、約10 nmであると結論づけられる。ヒステリシスギャップは、粒径の減少とともに広がる傾向にあることも明らかとなった。次年度は、水素吸蔵位置の特定や形状依存性について詳細に検討するとともに、各Pdナノ粒子中における水素-水素相関を導出し、吸蔵機構を解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
{100}面のみに囲まれた単結晶正六面体Pdナノ粒子の特異的な水素吸蔵・放出特性を明らかにし、強束縛水素が存在する臨界サイズを約10 nmと結論づけられた。次年度は、単結晶正六面体Pdナノ粒子での結果を、結晶性と表面結晶面の異なる多重双晶Pdナノ粒子、単結晶性八面体Pdナノ粒子、Pdナノプレートと比較することにより、水素吸蔵・放出特性の結晶性・結晶面依存性を明らかにできると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、単結晶正六面体Pdナノ粒子との比較のため、結晶性と表面結晶面の異なる多重双晶Pdナノ粒子ならびに単結晶性八面体Pdナノ粒子のみならず、新たに合成に成功したPdナノプレートの水素吸蔵・放出特性の結晶性・結晶面依存性を明らかにする。さらに、in-situ中性子回折測定により、各Pdナノ粒子中における水素-水素相関を導出し、水素吸蔵機構の詳細を解明する。
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