研究課題
本研究では、β-(1→3)結合の多糖であるグルカンの中でもカードランおよびシゾフィランを用いる革新的な超分子キラリティーセンサーの開発を目的として研究をスタートさせた。代表者が見出したグルカンとカチオン性ポリチオフェンとの錯形成挙動を支配する因子に想を得て、「induced-fit型」の螺旋空孔を与えてくれるカードラン(Cur)をキラルホスト、リポーターとしてジメチルアミノベンゾエート(DABz)を結合させたDABz-Curを用いるキラリティーセンサーの構築を行った。60% DMSO水溶液中でモノテルペン類のキラル認識能の検討を円二色性(CD)スペクトルの楕円率の変化量をゲスト濃度に対してプロットし評価した。モノテルペン類に関しては実験的に最もゲストを加えたときの励起子カップリングの変化量(Δθlimit)から、エナンチオ選択性を見積もった。リモネンでは2.8となり今まで報告されているリモネンの認識能の報告例(S/R = 3.9)と比べても比較的良好なエナンチオ選択性を示した。現在この成果をChemical Communication誌に投稿準備中である。さらにグルカンと水溶性ポリチオフェン(PyPT)からなる高感度in situセンサーの構築を行っている際に、非常に興味深い現象を見出した。Cur-PyPT錯体の錯形成挙動について基底および励起状態において詳細な検討を行ったところ、CurとPyPTの錯形成においては静電相互作用が働き、ポリイオン錯体が形成していることが明らかとなった。また、そのポリイオン錯体の存在量は溶液のpH, 温度に依存していることが示唆され、CurとPyPTの錯形成を支配する諸因子を明らかとした。そしてCur-PyPT錯体は、強固な三重鎖と非常に螺旋構造がゆるい二重鎖として存在していることが分光結果から実証された。現在この成果については、Journal of The American Chemical Societyに投稿中である。
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