研究課題
2年次は(平成27年度)は、初年度に構築したフェムト秒レーザー顕微鏡において、サブ100 fsのパルス幅を顕微鏡対物レンズ透過後の試料面上で実現するための最適化を行った。比較的NAの大きな(0.6~1.3程度)対物レンズにおける屈折率分散補償のためにプリズム対を用いて光学系を最適化し、蛍光及び第2高調波検出に基づき光パルスの自己相関関数測定からパルス幅を見積もった結果、60-70 fs程度のパルス幅が達成され、光源のスペクトルから予測される限界値にほぼ近いパルス幅をサブマイクロメートルの領域に集光することに成功した。次いで、上記顕微鏡を用い、一波長の光パルスの強度変調により三光子反応が優位に進行する状態と二光子反応が優位に進行する状態のスイッチングを行った。この実験の試料には種々の蛍光性ジアリールエテン誘導体(DE)を用いた。用いたDEの閉環体は強い蛍光を示し、一方開環体はと非蛍光性である。各光照射条件における開環体DEと閉環体DEの存在比は2光子蛍光強度から見積もった。光強度が比較的弱い場合は二光子反応(開環反応による消色、蛍光OFF)が支配的となり、光強度が高い場合は3光子反応(閉環反応による着色、蛍光ON)が進行した。実験と併せて理論的(計算)シミュレーションも行い、得られた実験結果の解釈が妥当であることを確認した。本研究と過去に実施した研究の結果から、一波長のパルス光の強度変化によって三光子反応と二光子反応の反応性制御が様々な系で可能であることを実験、計算両面から明らかにし、本アプローチの一般性を示した。
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