研究実績の概要 |
初年度に引き続き「不斉認識能を持つナノサイズの二次元空孔の構築」を目的として、新分子の合成とその固液界面における自己集合の走査型トンネル顕微鏡(STM)観測を行った。昨年度、2位に不斉中心に結合したヒドロキシ基を有する側鎖が六本置換したデヒドロベンゾ[12]アヌレン(DBA)誘導体が1,2,4-トリクロロベンゼン/グラファイトの界面において積層膜を形成することを明らかにした。本年度はこのことについてさらに詳細に調査を行い、積層膜の形成が溶質の濃度に依存することや一層目のみならず二層目のキラリティーも制御されることを明らかにした。また、キラルな側鎖が三本とアキラルな側鎖が三本置換したDBA分子ではより安定な積層膜を形成することも分かった。このヒドロキシ基で修飾された空孔の不斉識別能を、キラルなヒドロキシヘリセンをゲストとして調べたが、残念ながら期待した不斉識別は起こらなかった。今後、異なるキラルなゲストを用いて継続的に調査する予定である。 以前にキラルな側鎖が置換した DBA分子がアキラルなDBAが形成する右巻きまたは左巻きの六角空孔に優先的に吸着されることを明らかにした。そのことについて、さらに詳細に検討を重ねた結果、このキラルな分子の共吸着によりアキラルな分子の形成するハニカム構造のキラリティーが誘起されることが分かった。 これらの成果について、最終年度に学会発表を2件行った。投稿論文として1編報告した。
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