研究課題/領域番号 |
26620064
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
海崎 純男 大阪大学, 産学連携本部, 特任教授 (20089874)
|
研究分担者 |
赤井 智子 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (00356338)
城谷 大 函館工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (20720808)
中田 博保 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (60116069)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 繊維状粘土 / ユウロピウム(III)錯体 / ベンゾフェノン系光増感配位子 / 赤色蛍光体 / 温度変化ユウロピウム蛍光体 |
研究実績の概要 |
本年度は、多機能性無機・有機複合体からなる繊維状粘土として炭酸カルシウムをEDTAで除去したPangelAD-Eを用いて、これに取り込まれたユウロピウム(III)錯体の合成の再現性を確認と発光強度の増大を検討するとともに、温度変化発光スペクトルの詳細な検討を行った。 1.粘土と光増感配位子の組合せの最適化:4,4-dimethoxybenzophenone(dmbp)と1,10-phenanthroline(phen)を配位子とするdmbp・phen@PangelAD-E;Eu3+を合成して、それぞれの配位子量をdmbp20%phen20%とdmbp10%phen10%で合成して、その視認性発光を比較すると、前者の強度が強い。また、dmbpの代わりに1,4-dibenzoylbenzene(DBB)を使って合成するとより発光強度の強い蛍光体が得られた。また、これらの錯体の150℃,1時間加熱後の発光スペクトルの強度が増大することが明らかになった。 2.dmbp@PangelAD; Eu3+では室温ではあまり発光せず、温度上昇で発光する。100℃までの温度コントローラー付き蛍光分光光度計で温度変化発光スペクトルを測定したところ、dmbp@PangelAD-E; Eu3+ の温度変化発光スペクトルでは、室温(30℃)から100℃まで上げていくと、450nmの配位子または粘土の発光と615nm のユウロピウム(III)イオン特有の4f-4f発光発光強度が減少する。これを120℃に加熱すると615nmの発光が強くなる。また、4-phenylbenzophenone(ppb)@PangelAD-E;Eu3+では、室温から温度上昇で450nmの発光は減少するが、615nmの発光は増大することがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、最も注力している課題は一つは発光強度の増大化で、これは鉄分の出来るだけ少ないセピオライトを用いて、ユウロピウム(III)イオンの含有量の増加とベンゾフェノンン誘導体とフェナントロリン配位子の量的割合の組合せを検討する初期的な段階である。もう一つは温度変化発光の事例を多く集めてことで、ベンゾフェノン誘導体を単独で含むLigand@PangelAD-E;Eu3+は定性的には昇温で発光強度が増大することを確認している。これらの解決しなければならない明確な課題を見出すことができた点で、順調に進展していると考えらる。
|
今後の研究の推進方策 |
ランタニドイオン(ユウロピウム(III)とテルビウム(III))と配位子の量的割合の最適化を行う。 そのために、現在のランタニドイオンの含有量約1%を如何に増やすかが課題であるが、仕込み量、 反応温度と時間を変えることで増量の可能性を見出し、またマイクロ波による反応を検討している。配位子はベンゾフェノン誘導体を種々用いて検討を始めている。温度変化発光に関しては、定性的に確認済みのベンゾフェノン誘導体とPangelAD-E:Eu3+について定量的な蛍光スペクトル測定を行うことで、温度変化発光の原因を究明する手がかりを得る。最近、鉄分の少なく白度がろ紙並みのトルコ産セピオライトが高輝度化に有望であることを見出したので、これを用いて実験を進めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
大阪大学の研究代表者と大阪教育大の研究分担者の残額はそれぞれ655円と1220円であるが、これは調整する時間がなくて繰り越すことになった。函館高専の研究分担者は分担金の使用開始が昨年度後期となり、その時点で体調不良で研究することができず、分担金が未使用のまま、本年3月末で退職することになって、全額研究代表者の阪大に返還されることになった。産総関西センターの研究分担者は都合で分担金の使用を翌年度に繰越することになり、残額が多くなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究代表者は残額655円と函館高専の分担金100,000円を今年度に繰り越して使用することはできる。また、大阪教育大と産総硏関西センターの残額をそれぞれ今年度繰り越して使用する予定である。
|