近年、新たな次世代太陽電池の有力候補として急速に注目を集めているペロブスカイト結晶を用いる無機有機ハイブリッド太陽電池の光電荷分離状態を高速時間分解電子スピン共鳴法で観測した。1)光活性層・正孔輸送層において電子や正孔を伝達し輸送する不対電子軌道を特定し、2) ペロブスカイト/酸化チタン多孔質などの層界面におけるキャリア拡散ダイナミクスと格子運動および、3)層界面において生じる電子-正孔対による電子軌道重なりの空間的広がりを正確に特徴付けた。以上の計測から、接合界面が高効率な光電変換を引き起こす根源的な機構の解明した。本研究では、時間分解電子スピン共鳴(TREPR)法を用い、無機・有機ハイブリッド太陽電池の初期光電変換過程において重要な役割を果たすペロブスカイト/酸化チタン多孔質層界面の光電荷分離過程を観測する。低温領域の束縛電荷分離状態の測定と共に、高温領域ではペロブスカイト層および正孔輸送層において高速なキャリア拡散・解離により生成する電子スピン分極とスピン緩和時間を定量化する。電子や正孔を伝達し輸送する不対電子軌道を特定し、電子-正孔対におけるキャリア拡散定数と、不対電子軌道の重なりや空間的広がりを正確に特徴付けた。 特に、本実験系の初期電荷分離状態において電子スピン量子コヒーレンスを生成した励起子はワニエ励起子に帰属された。以上のことからSpiro-OMeTAD/CH3NH3PbI3/TiO2基板では、斜方晶の結晶構造をもつCH3NH3PbI3において、光照射により生成されたワニエ励起子の一重項-三重項変換によって生じた電子スピン量子コヒーレンスが、酸化チタンの表面サイトにトラップされた電子、またSpiro-OMeTAD/CH3NH3PbI3界面近傍のヨウ素欠陥にトラップされた正孔のスピン分極として引き継がれたことで、E/A信号が得られたと結論した。
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