超分子ナノファイバーの音響配向現象の光制御を企てた。超分子ナノファイバーの音響配向挙動は、ナノファイバーの長さ、硬さ、太さ、溶媒との親和性などに大きく依存する。ナノファイバーを構築するユニット分子の構造を光で可逆に変化させ、それが構築する巨大な分子集合体の構造や性質の変化にアウトプットさせることによって、音響配向挙動の変化を引き起こすことが期待できる。本課題では、ナノスケール分子機械への応用を目指し、音と光、二種の物理刺激に応答して状態や性質を変化させるインテリジェントナノファイバーの開発を行った。光応答性ユニットとして、アゾベンゼンをコアに有するAZを設計・合成した。trans-AZはシクロヘキサン中で自己集合し、ファイバー状の集合体を形成することがわかった。trans-AZに紫外光を照射すると、AZはcis体へと異性化し、集合体はアモルファス状の凝集物に形態が変化した。これら両異性体の音響配向挙動を直線二色性(LD)スペクトルによって評価したところ、ファイバー構造を持つtrans-AZ集合体は可聴音照射によってLDを誘起し、音響配向を示すことがわかった。さらなる研究の発展として、次に光応答性ユニットとしてジアリールエテンを組み込んだDEUを新たに設計・合成した。合成したDEUopenはn-ヘキサン中でファイバー状構造を形成し、紫外光照射によってファイバー構造を維持したままclosed体へと異性化した。異性化の前後で吸収スペクトルが大きく変化して、両方の状態で音響誘起LDが観測された。本研究では、光によって音響誘起LDの波長変換に成功した。我々は、アゾベンゼンやジアリールエテンをコアに組み込むことによって,紫外光と可視光により音響配向のON-OFFや,誘起LDの波長切り替えができる多刺激応答性超分子ナノファイバーを創ることに成功した。
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