研究課題/領域番号 |
26620068
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
佐藤 久子 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (20500359)
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研究分担者 |
矢島 知子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (10302994)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超分子キラリティ / 低分子量ゲル化剤 |
研究実績の概要 |
本研究ではゲルをとりあげ、分子キラリティがどのように組織化されて超分子キラリティの発現に至るかを階層的観点(形成までの種々の時間と空間スケールに着目する)から明らかにすることを目的としている。方法としては、振動円二色性分光法(VCD)を用いる。対象としては、パーフルオロアルキル基をもつ一連のゲル化剤分子を合成する。パーフルオロ部分は、フッ素原子間の立体障害から自発的にらせんを巻くことが知られている。そこで、ゲル化によってこの部分が明確なVCDシグナルを与えることを手がかりに、どのような段階を経て、キラルフィブリールが形成されるかを解明する。 本年度は、ゲルのフィブリールの形成過程の追跡のために以下の検討を行った:(1)パーフルオロ基とアルキル基をもつ別々のゲル化剤を混合した2成分系をとりあげ、ゲル化を平衡論と速度論の両観点から検討を行った。そのために、2つ成分のそれぞれの特性CO伸縮振動に着目し、VCD吸収の大きさや符号からゲル化のプロセスを追跡した。また、(2)ゲル化剤が2次元的に制限された条件下でどのような会合を示すかについて調べた。そのために、ラングミュア・ブロジェット(LB)法によりゲル化剤薄膜を製造し、その表面形状を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。その結果、キラルの場合とラセミ体に関して、2次元界面における凝集の方法が異なることがわかった。さらに、ゲルフィブリールの前駆体と思われる会合体も見出された。 また、新規ゲル化剤の合成も行い、そのゲル化能に関しても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調にすすんでいるが、H28年度最後の段階におけるLB膜形成において、当初予想しなかった現象が見つかった。そのため、その追加実験や再現実験が必要となった。H29年度まで計画を延長して検討することにした。
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今後の研究の推進方策 |
ゲル化剤の界面における挙動の解明を引き続き行い、キラルとラセミ体の場合の凝集形態相違の確認や、LB膜で被覆したガラス表面の親水性、撥水性の検討を表面圧力との関係を基に行う予定である。原子間力顕微鏡を用いて、表面状態の観察をする予定である。また、振動円二色性分光法と単結晶X線の結果を用いて、固体状態とゲル状態におけるフィブリールの構造予測をおこなう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度の計画である超分子キラリティの経時変化の検討において、振動円二色性分光法(VCD)と原子間力顕微鏡(AFM)によるゲル化過程のその場観察を行っている。その過程で、当初の計画になかった現象が見つかり、その追加や再現実験を行っている。その解析に時間を要しており、次年度に延長して検討することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
ゲル化剤の挙動解析のための消耗品、謝金、出張費、学会参加費、論文掲載費などに使用予定である。
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