研究課題/領域番号 |
26620069
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中嶋 直敏 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80136530)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 単層カーボンナノチューブ / フォトルミネッセンス / ネルンスト解析 / 酸素ドープナノチューブ / その場 分光電気化学手法 / 酸化還元電位 / フェルミ準位 / ナノチューブカイラリティ |
研究実績の概要 |
単層カーボンナノチューブは、1枚のグラフェンシートを丸めた円筒状の構造体である。半導体性の単層カーボンナノチューブはその電子構造から光吸収とPhotoluminescence(PL)が観察される。最近の研究で単層カーボンナノチューブに低濃度のオゾンを反応させることで酸素をドープし、PLの長波長側に新たなピークが生じることが報告された。酸素ドープ(O-doped)単層カーボンナノチューブは簡便な操作で作製可能であることや発光効率が大きく向上することが知られ、光デバイスやバイオイメージングへの応用が注目されているが、その電子特性は未解明な点が多い。本年度の研究において、O-doped単層カーボンナノチューブの電子準位をPL分光電気化学測定によって明らかにした。O-doped単層カーボンナノチューブの外部電位に対する還元側のPLスペクトル変化を測定、解析したところ、電位をマイナス側に印可するに伴い、PL強度が減少し、-1V vs. Ag/AgClではほぼ消光した。単層カーボンナノチューブの還元に伴うPLのクエンチが起こっていることがわかる。同様の挙動は酸化側でも見られた。この挙動に対してNernst式をベースに解析し、O-doped 単層カーボンナノチューブの酸化還元電位を酸化電位= 0.549 V、還元電位= -0.424 V vs. Ag/AgClが決定できた。非ドープ単層カーボンナノチューブの酸化と還元の電位はそれぞれ0.582 Vおよび-0.437 V vs. Ag/AgClであった。すなわち、酸素をドープにより、単層カーボンナノチューブは酸化と還元共により起こりやすい電位にシフトすることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一本の(n,m)カーボンナノチューブの電子準位決定へのアプローチは、かなり困難であったが、京都大学との共同研究により超高解像度のレーザーフォトルミネッセンス装置を用いたこと、また、その場フォトルミネッセンス分光電気化学測定のための特殊電気化学セルの製作(特注により製作)により、測定が可能となり、得られたデータの解析により、当初の目的に到達した。また、単層カーボンナノチューブの電子準位に対するミクロ環境効果については、現在研究を進めている状況である。 一方、極く最近、局所酸素ドープ単層カーボンナノチューブは、未ドープのカーボンナノチューブに比べて、蛍光の量子収率が10倍以上増大するという興味ある報告がなされた。本研究では、この局所酸素ドープ単層カーボンナノチューブに対して、筆者が開発したその場フォトルミネッセンス分光電気化学測定を導入し、局所酸素ドープ単層カーボンナノチューブの正確な酸化電位、還元電位、フェルミ準位の決定し成功した。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、申請の研究計画に沿った研究を進める。それとともに、昨年度に成功した局所酸素ドープ単層カーボンナノチューブの電子準位決定の展開として、H27年度は、局所化学修飾ドープ単層カーボンナノチューブを系統的に分子設計、合成し、これらの正確な酸化電位、還元電位、フェルミ準位の決定に関する実験を行なう。
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