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2014 年度 実施状況報告書

高感度化を目指した超分子型メタルフリーMRI造影剤の構築

研究課題

研究課題/領域番号 26620070
研究機関九州大学

研究代表者

唐澤 悟  九州大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (80315100)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード造影剤 / MRI / メタルフリー / 超分子 / 蛍光イメージング
研究実績の概要

身体を非侵襲的に診断するMRIは全国で約3,000台が稼働されていることが示すように、どこにでもあり最もなじみのある診断法の一つであると言える。適切な画像診断を行うにあたりしばしMRI造影剤が用いられており、それは希少金属であるガドリニウム錯体を基本構造としている。ガドリニウムイオンは元素の中で最もスピン量子数が高いS=7/2であることから、コントラスト差が生じる高輝度な組織画像を提供可能で、臨床診断薬として長年用いられてきている。すなわち非常に感度が高い(明るい画像)から用いられてきたのである。しかしながら、希少金属であることからの社会的脱レアメタル化の動静、ガドリニウムイオンが腎毒性を示す点や造影剤自体に組織特異性がない点から、全く新しいコンセプトに基づいた造影剤が望まれているが、得られてこなかった。
このような背景から我々は、造影剤に必須な要素を兼ね備えた常磁性体である有機ラジカルに着眼し、代替レアメタルとしての「メタルフリー造影剤」の構築を提案してきた。将来的に体内への投与を考慮した場合、水への溶解性は重要な点である。そこで水に溶解するDNAをプラットホームとし、DNAに安定有機ラジカルであるTEMPOラジカルを導入した分子の造影剤としての感度を見積もったところ、TEMPOラジカル単体よりも3倍高輝度な物質を得ることが出来た。それはDNAの持つ水への高い親和性や大きな分子サイズである点に起因した結果であると考えている。従ってさらに高感度化を狙い、臨床で用いられるメタルフリー造影剤へ展開することが本研究の目的である。今年度の成果として論文4報と学会発表14件を行うことが出来た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

高感度化を得るために、水に溶解するDNAをプラットホームする研究方針で進めてきた。その最大の成果は以下のとおりである。DNAに疎水性置換基であるステアリルキ基とTEMPOラジカルを導入することで、水中でナノ微粒子となるDNAミセル型の構築に成功した。このナノ微粒子の感度を測定すると、臨床薬であるガドリニウム錯体と同程度の感度を示すことが明らかとなり、高感度という点でのメタルフリー造影剤構築の足掛かりは出来たと考えた(Karasawa S. et al. RSC Adv. 2013, 3, 3531)。そこで、より臨床薬としての応用を考えた場合、DNAのような複雑で単価の高い物質ではなく、より簡単で安価に合成できる物質を用いてのプラットホーム化が望まれる。従って我々の研究室で開発した両親媒性置換基を有するウレニルベンゼン誘導体を新たなプラットホーム候補とする研究を始めた。昨年度研究一年目においては、物質の合成、物性評価と最適な分子設計に時間を要し、新たなプラットホームによる高感度の物質を得るには至っていない。また今後の研究方針の項目で詳細に述べるが、最適なプラットホーム構築にあたり機能性置換基である蛍光団を導入することから研究を再スタートさせることを計画している。

今後の研究の推進方策

新たなプラットホームであるウレニルベンゼン誘導体を用いた研究を継続的に進めていく。我々の最終目標は「メタルフリー造影剤の構築」であるが、最適な分子設計を効率的に得るために、研究方針の修正を試みる。それは機能性置換基である有機ラジカルを導入するのは研究最終年度のH28年度とし、2年目である今年度は機能性置換基として蛍光団を導入し、プラットホームの最適化を優先的に進めることとした。その理由は、有機ラジカル自体の生体内への安定性を考慮した場合、有機ラジカル自体の分子修飾が必要である点と合成上の都合からである。
用いる蛍光団として、我々の研究室で開発したプッシュプル型発光物質TFMAQを用いることとした(Karasawa S. et al. Chem. Eur-J. 2012, 18, 15038 )。その理由は量子収率50%程度で十分にイメージングできる点、安定性に優れている点、プッシュプル型であるため環境に応答して蛍光強度波長に変化が生じる点、合成法が確立している点、それとオリジナルな物質である点などである。しかしながらTFMAQ自身に水への溶解度が低いため、オリゴエチレングリコールを基本とした両親媒性側鎖を導入し、水への溶解度を高めた。現在この方針で3種類の化合物の合成に成功し、そのうち2種類においては共同研究先との連携によって、in vivoイメージングの撮像に成功している。その結果、興味深いことに、外部刺激に応答してがんへの集積が確認された。このことは我々の構築した新たなプラットホーム有効性が示されているが、何点かの問題が新たに生じたため、分子設計の微調整を行いながら今年度は最適なプラットホーム構築を重点に研究を進める。また、今年度後半には、機能性置換基として有機ラジカルを導入し、最終年度を迎えたいと考えている。

  • 研究成果

    (18件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (14件)

  • [雑誌論文] Stable π-Radical from a Contracted Doubly N-Confused Hexaphyrin by Bis-Palladium Metallation2015

    • 著者名/発表者名
      Y. Hisamune, K. Nishimura, K. Isakari, M. Ishida, S. Mori, Satoru. Karasawa, T. Kato, Sangsu L., D. Kim, and H. Furuta
    • 雑誌名

      Angew. Chem., Int. Ed. Engl

      巻: 54 ページ: in press

    • DOI

      10.1002/anie.201502285

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Heterospin Single-Molecule Magnet Behaviors after Irradiation of Polymorphous 2:2 Cyclic Diazo-Cobalt(II) Complexes2015

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Yoshihara, Satoru Karasawa, Noboru Koga
    • 雑誌名

      Inorg Chim. Acta,

      巻: 428 ページ: 57-64

    • DOI

      10.1016/j.ica.2015.01.025

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Magnetic Properties of 1:2 Mixed Cobalt(II) Salicylaldehyde Schiff-Base Complexes with Pyridine Ligands Carrying High-Spin Carbenes (Scar = 2/2, 4/2, 6/2, and 8/2) in Dilute Frozen Solutions: Role of Organic Spin in Heterospin Single-Molecule Magnets2014

    • 著者名/発表者名
      Satoru Karasawa, Kimihiro Nakano, Daisuke Yoshihara, Noriko Yamamoto, Jun-ichi Tanokashira, Takahito Yoshizaki, Yuji Inagaki, Noboru Koga
    • 雑誌名

      Inorg Chem.

      巻: 53 ページ: 5447-5457

    • DOI

      10.1021/ic403074d

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Crystal Structures, Thermal Properties, and Emission Behaviors of N, N-R-Phenyl-7-amino-2,4-trifluoromethylquinoline Derivatives: Supercooled Liquid-to Crystal Transformation Induced by Mechanical2014

    • 著者名/発表者名
      Satoru Karasawa, Ryusuke Hagihara, Yuichiro Abe, Naomi Harada, Jun-ichi Todo, Noboru Koga
    • 雑誌名

      Cryst. Growth Des.

      巻: 14 ページ: 2468-2478

    • DOI

      10.1021/cg5001842

    • 査読あり
  • [学会発表] オリゴエチレングリコール鎖を有する水溶性ポルフィリン誘導体の合成と水中での自己集合化挙動2015

    • 著者名/発表者名
      竪山大康・唐澤 悟・古賀 登
    • 学会等名
      日本化学会第95春季年会
    • 発表場所
      日本大学理工学部キャンパス
    • 年月日
      2015-03-28
  • [学会発表] 様々な分子間結合部位を有する両親媒性分子の水中での自己集合化挙動2015

    • 著者名/発表者名
      岡本優菜・大橋枝里子・唐澤 悟・古賀 登
    • 学会等名
      日本化学会第95春季年会
    • 発表場所
      日本大学理工学部キャンパス
    • 年月日
      2015-03-28
  • [学会発表] 温度応答性蛍光イメージングプローブの合成と水中での物性評価2015

    • 著者名/発表者名
      荒木 健・嶋田敬志・村山周平・唐澤 悟・青木伊知男・佐賀恒夫・古賀 登
    • 学会等名
      日本化学会第95春季年会
    • 発表場所
      日本大学理工学部キャンパス
    • 年月日
      2015-03-28
  • [学会発表] キノリン誘導体の分子内光環化反応と自己集合挙動2015

    • 著者名/発表者名
      唐澤 悟・藤堂潤一・臼井一晃・末宗 洋・古賀 登
    • 学会等名
      日本化学会第95春季年会
    • 発表場所
      日本大学理工学部キャンパス
    • 年月日
      2015-03-27
  • [学会発表] ジナフチリジルアミン誘導体の光反応挙動2015

    • 著者名/発表者名
      萩原隆一・唐澤 悟・古賀 登
    • 学会等名
      日本化学会第95春季年会
    • 発表場所
      日本大学理工学部キャンパス
    • 年月日
      2015-03-27
  • [学会発表] ヘキサアザペンタセン誘導体の合成と光物性2015

    • 著者名/発表者名
      廣田淳子・原田奈央美・唐澤 悟・古賀 登
    • 学会等名
      日本化学会第95春季年会
    • 発表場所
      日本大学理工学部キャンパス
    • 年月日
      2015-03-27
  • [学会発表] 種々の 3d 金属イオンを持つヘテロスピン複核錯体の合成とその 構造と磁性2015

    • 著者名/発表者名
      森 昂也・村島健介・唐澤 悟・古賀 登
    • 学会等名
      日本化学会第95春季年会
    • 発表場所
      日本大学理工学部キャンパス
    • 年月日
      2015-03-27
  • [学会発表] 光応答型2p-3d-4fヘテロスピン一次元鎖錯体の構造と磁気的性質2015

    • 著者名/発表者名
      村島健介・唐澤 悟・古賀 登
    • 学会等名
      日本化学会第95春季年会
    • 発表場所
      日本大学理工学部キャンパス
    • 年月日
      2015-03-27
  • [学会発表] がん集積を目指した超分子型造影剤の開発2015

    • 著者名/発表者名
      唐澤 悟
    • 学会等名
      第2回東北大学リーディング大学院研究会
    • 発表場所
      東北大学理学部
    • 年月日
      2015-02-21
  • [学会発表] 光応答型ヘテロスピンLn(III)二核錯体の構造と光照射前後の磁性2014

    • 著者名/発表者名
      村島健介・唐澤 悟・古賀 登
    • 学会等名
      第64回錯体化学討論会
    • 発表場所
      中央大学後楽園キャンパス
    • 年月日
      2014-09-19
  • [学会発表] 生体ケイ光プローブとしてのTFMAQ誘導体の応用2014

    • 著者名/発表者名
      嶋田敬志・唐澤 悟・藤本景子・田中嘉孝・古賀 登・村山周平・佐賀恒夫・青木伊知男
    • 学会等名
      第25回基礎有機化学討論会
    • 発表場所
      東北大学川内キャンパス
    • 年月日
      2014-09-08
  • [学会発表] 一置換及び二置換の両親媒性側鎖を持つウレニルベンゼン誘導体の合成と水中での自己集合化挙動2014

    • 著者名/発表者名
      岡本優菜・大橋枝里子・唐澤 悟・古賀 登
    • 学会等名
      第25回基礎有機化学討論会
    • 発表場所
      東北大学川内キャンパス
    • 年月日
      2014-09-07
  • [学会発表] アミノ基で連結されたビスナフチリジン誘導体の合成と光照射前後の構造と光物性2014

    • 著者名/発表者名
      萩原隆介・唐澤 悟・古賀 登
    • 学会等名
      第25回基礎有機化学討論会
    • 発表場所
      東北大学川内キャンパス
    • 年月日
      2014-09-07
  • [学会発表] 生体イメージングプローブを目指した水溶性ポルフィリン誘導体の合成と自己集合化挙動2014

    • 著者名/発表者名
      竪山大康・大久保研吾・唐澤 悟・古賀 登
    • 学会等名
      第25回基礎有機化学討論会
    • 発表場所
      東北大学川内キャンパス
    • 年月日
      2014-09-07

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公開日: 2016-05-27  

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