研究実績の概要 |
我々のグループでは、副作用がなく投与量が少なくても効果が生じる造影剤開発を目指し、従来の金属型ではなく、有機ラジカルをスピン源としたメタルフリー造影剤でチャレンジしている。今回、1)感度を大きくするアプローチ、2)がん集積へのアプローチ 二つについて報告する。 一般的に高分子ポリマー化する手法によって分子サイズを大きくするが、我々は多様な分子間相互作用を利用した超分子による自己集合化によるアプローチで検討した。この方法は、生体内での分解性が高い点と多くの機能性置換基導入が可能である利点を持つ。我々のグループで取り組んでいる強い分子間水素結合を有するウレアベンゼン誘導体にTEMPOラジカルを導入したTEMPO-UBD1において、比較的高い感度を示し、臨床薬のガドリニウム錯体の四分の一程度まで感度を上昇させることができた。一方、プロトン(H+)に応答するアミノ基を導入したTEMPO-UBD2においては、pHに応答して造影効果が変化することを見出し、2016年J. Org,Chemに研究成果が掲載された。 ウレアベンゼン誘導体は温度に応答して自己集合化する性質がある。蛍光分子を導入したウレアベンゼン誘導体TFMAQ-UBDを用いてがん集積実験を行った結果、がんの温度に応答してTFMAQ-UBDが集積していることが示唆された。本研究成果は、2017年Nano Lett.(インパクトファクター13.7)に掲載され、日経新聞などへ紹介された。今後は、ウレアベンゼン誘導体へTEMPOラジカルを導入した造影剤TEMPO-UBDシリーズで同様ながん集積性について検証していく。今回の研究期間内で、ガドリニウムを用いないメタルフリーでのアプローチの有効性が示されたと考えている。
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