実験では、π共役を伸ばしたアントラセン―X―安定ラジカル系を複数合成し、時間分解ESRを測定したところ、励起状態でスピン偏極したと見られる信号が観測された。平面性を高めた系では、励起状態の失活により弱くスピン編極したと見られる信号が観測された。 時間領域シミュレーション法の開発では、三重項状態とラジカル間の交換相互作用を取り込んだ平均ハミルトニアン理論を用いたスペクトルシミュレーション法の開発に一定程度成功した。励起二重項状態からの失活による分極移動を取り込んだ拡張により、上記の励起状態でスピン偏極したスペクトルのシミュレーションに成功し、基底状態のわずかな偏極が予測された。
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