研究実績の概要 |
金属ナノ粒子が示す特徴的な光散乱特性と高いコントラストにより分解能以下の観察が可能な暗視野観察法とを組み合わせることで,食中毒などの危害要因であるバクテリアをターゲットとした新しい分析法の開発について検討した。 金属ナノ粒子は特定波長の光を吸収して散乱光を生じる。広い波長域での吸収を得るために,金属ナノ粒子の集合化について検討した。また,この構造体を選択的に結合する標識として用いるために,0157抗体の導入についても検討した。暗視野顕微鏡観察の結果,構造体は単一粒子の10倍以上の散乱光を示した。また,蛍光観察モードでは,構造体と同じ位置に蛍光ラベルしたO157抗体に基づく蛍光が観察された。そこで,この構造体を用いて種々の大腸菌(E.coliO157,026とO111)の標識化について検討した。暗視野観察によると,構造体の添加前後でE.coliO26およびO111には変化が見られなかったが,E.coliO157は強い散乱光として観察された。これは,構造体の光散乱特性と抗体抗原反応による特異結合性に基づいて,バクテリア表面での光アンテナ形成が達成されるものである。さらに,一定濃度の構造体を含む分散液において,バクテリアの定量(10~100,000 cells/mL)が可能であった。 以上,金属ナノ粒子構造体の有する特徴的な光散乱特性に基づいたバクテリアのワンステップ検出および,迅速な危害要因の特定が可能になった。
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