本研究で対象とする磁気浮上体の光運動制御技術は、超電導磁石のような大規模な装置を必要とせず、安価かつ耐久性を有するネオジム磁石と熱分解グラファイトを用いて実現することができることから、環境に優しく、低コストで汎用性の高い太陽エネルギー利用システムに必要な条件をクリアできる十分なポテンシャルを有していると考えられる。本研究では、現在までに得られている知見を基に、磁気浮上したグラファイトの光運動機構の解明とそれによる光エネルギー変換効率の改善、及び光発電装置の開発を目的として研究を進める。グラファイト円板の運動は、光照射に伴う温度上昇によりグラファイトの反磁力と重力との釣り合いが崩れるために生じることから、運動効率は光照射部位や磁場の空間分布や方向などに依存することが考えられる。 2014年度は、グラファイト円板の回転運動を最適化することを目的として、円筒状のネオジム磁石上に磁気浮上したグラファイト円板(厚さ25 μm、直径10 mm)に波長405 nmのレーザー光を照射した際における、円筒状ネオジム磁石の各移動距離、及び傾斜角度に対するグラファイト円板の回転数を評価した。各ネオジム磁石移動距離における傾斜角度依存性について評価したところ、光照射方向に傾斜角度を増加させた場合の方が回転数の増加の度合いが高く、移動距離0.6 mm、傾斜角度4°において最大の回転数(180 rpm)が得られた。このように、2014年度の研究により、光照射部位や磁場の方向などを最適化することにより、グラファイト円板の回転速度の増加に成功した。今後は、円板の大きさや形状、及び光照射面積などを最適化することで変換効率の更なる向上が期待できる。
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