研究課題/領域番号 |
26620074
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小笠原 正道 北海道大学, 触媒化学研究センター, 准教授 (70301231)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 不斉合成 / ホスフィン / 閉環メタセシス / モリブデン / クロム / 非対称化 |
研究実績の概要 |
リン原子上にキラリティを有する化合物は、不斉配位子などのキラル・テンプレートとして利用される有用な化合物である。しかし、これらの不斉リン化合物を光学活性体として得る従来の手法のほとんどは、予め合成されたラセミ体の光学分割、あるいは化学量論量の不斉源を必用とする古典的なジアステレオ選択的合成手法であり、より効率の高い「触媒的不斉合成法の開発」が求められている。近年、我々は不斉閉環メタセシス反応を利用した「面不斉遷移金属錯体の触媒的不斉合成法」を種々報告している。これらの知見を基に、本研究では「プロキラルなビスアルケニルホスフィン類が配位したクロム錯体」をプラットホームとした「リン原子上での触媒的不斉誘起法」について検討した。クロムに配位したビスアルケニルホスフィンのリン上には、2つのエナンチオトピックなアリル基が存在しており、不斉非対称化を伴った閉環メタセシス反応により、不斉リン原子を有するクロム錯体が光学活性体として最高88%のエナンチオ選択性で得られることを見出した。ここで得られた光学活性なクロム錯体は、空気中で太陽光照射することにより、容易に酸化的に脱クロムすることができ、不斉閉環メタセシス反応により錯体上で構築されたホスフィン配位子を単離することができる。リン原子の酸化を防ぐ目的でイオウ存在下で脱クロム反応を行うと、光学純度を損なうことなくP-キラルホスフィンスルフィドへと導くことができることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究において、「ホスフィン類を触媒的に不斉合成する反応系」を確立することができた。この反応は新規な反応系であり、現在までの研究で最高82%eeのエナンチオ選択性を達成している。今後は、更なるエナンチオ選択性の向上を目指した反応条件の精査、基質のチューニングを行うことになるが、初年度の研究としては概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に見出した反応系を基に、エナンチオ選択性の向上を目指す。具体的には、90%eeを越える選択性を目標とする。目標達成のために、触媒系の検討、不斉配位子の新規合成、基質の置換基効果などを精査し、高いエナンチオ選択性が実現できる反応系を精査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究テーマを遂行する予定であった研究員が、急遽就職が決定し、4月半ばで予定外に退職することとなった。その後、代わりの研究員を探していたが、本研究を遂行する技量を持つ適当な人員を昨年度中に補充することができなかった。そのため、平成26年度は既存の設備、試薬類で基礎研究を行い、来年度以降に適切な人員を雇用して研究を続行することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究目的を効率よく達成するために、平成27年度は研究補助員を雇用し、研究のスピードアップを図る予定である。
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