研究課題/領域番号 |
26620078
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
三上 幸一 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (10157448)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ジフルオロメチル化 / BNCT剤 / ホウ素 / ジフルオロカルベン / フルオロホルム / CF3SiMe3 / CF3SiEt3 / t-BuP4 |
研究実績の概要 |
BCF2Hの合成にホウ素上で求核置換反応を進行させるのは困難とされる。従って求電子的なジフルオロカルベンを挿入させる。 1)まず最も安価なフルオロメチル化剤としてフルオロホルムを塩基によりホウ素上に反応させ、生成するBoronate種からフッ素の脱離を伴うヒドリドの1,2-転位によってジフルオロメチル化ホウ素の合成を試みた。塩基を種々検討し、有機強塩基であるt-BuP4を用いる事により、90%以上の高い収率でトリフルオロメチル化体を合成する事に成功した。フッ素の脱離を促進するべく、フッ素との親和性の高いケイ素、ホウ素試薬を様々に検討したが、SiOTf、B(ArF)3等を用いてもヒドリド転位生成物を得るには至っていない。 2)従ってジフルオロカルベンの挿入により、直接的にジフルオロメチル化体の合成を試みた。ジフルオロカルベン前駆体を種々検討した結果、最も安価なフルオロホルムを、アニオン種であるボリルリチウムにBuLi触媒量存在下反応させ、総収率75%でminor生成物ではあるものの望むジフルオロメチル化体を25%の収率で得る事に成功した。主生成物はボリルリチウムがフルオロホルムによってプロトン化されている事から触媒量のBuLiではジフルオロカルベンの発生が触媒的に回らない事が明らかとなった。従って当量以上のBuLiを用い収率75%以上でジフルオロメチル化体を得るべく検討している。 3)フルオロホルムでプロトン化が進行してしまう事からそのHをSiに置換したCF3SiMe3をジフルオロカルベン前駆体として検討した。触媒量のBuLiでジフルオロカルベンが発生し、望むシラジフルオロメチル化ホウ素を得る事に成功した。しかしボリルリチウムがシリル化された生成物が依然主生成物であった。従ってより嵩高いCF3SiEt3を低温で反応させ、選択的なシラジフルオロメチル化体の合成を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
トリフルオロメチル化ホウ素中間体、ジフルオロメチル化ホウ素化合物の合成に成功したものの低収率であったり、発生が比較的困難な活性種であるボリルリチウムを用いなければならない。また主生成物はボリルリチウムがフルオロホルムによってプロトン化あるいはシリル化されたものである。従って上記1-3の試みをいずれも成功させ、望むジフルオロメチル化ホウ素化合物を収率良く得る事を目標と設定している。
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今後の研究の推進方策 |
1)高収率で得られたトリフルオロメチル化体を、ルイス酸性が極めて高く、しかも嵩の小さいガス状のBF3等を用いてフッ素を脱離させ、ヒドリド転位した目的生成物を高収率で得る。 2)フルオロホルムに当量以上のBuLiを作用させ、ジフルオロカルベンを効率的に発生させ、高収率でジフルオロメチル化体を得る。 3)嵩高いCF3SiEt3を、しかも低温で反応させ、選択的にジフルオロカルベンを効率的に発生させ、シラジフルオロメチル化体を高収率で合成する。
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