研究課題/領域番号 |
26620081
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
依光 英樹 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00372566)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シラトラン / ピナコラートボラン / パラジウム / ボリル化 / クロスカップリング |
研究実績の概要 |
前年度の知見に基づき,有機シラトラン化合物を有機金属反応剤とするクロスカップリング反応について研究を行った.特にアルキニルシラトランに関する研究を進め,所望の反応が進行することを予備的ながらも見つけた.また,アリールシラトランを用いた場合には,塩基が必要ながらも効率良くアリール化できることを見いだした. シラトランを研究している過程で,シラトラン骨格のみならず,ピナコラートボリルユニットが金属パートとして利用できることも見いだした.特に,有機ハロゲン化物や有機硫黄化合物のボリル化反応が効率良く進行することも見いだした.中でも,塩化アリールを基質とすると,ボリル化反応が塩基の非存在下進むことも発見した. さらに,電子豊富でかさ高いパラジウムホスフィン触媒を用いてピナコールボランと塩化アリールを塩基非存在下で反応させると,対応する脱クロロ化体が良好な収率で得られることを見いだした.本反応では,脱クロロ化のみが進行しボリル化体はほとんど見られず,塩基を用いる条件と対照的である.酸化的付加により生じる塩化アリールパラジウムとピナコールボランの反応が高いルイス酸性を有するホウ素とパラジウム上の塩化物イオンの強い相互作用によって進行し,水素がパラジウム上に選択的に移動するためと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
シラトラン骨格を有するケイ素反応剤を利用する研究が極めて順調に進んでおり,現在論文を投稿中である.受理されれば,大きなインパクトをもたらすことになる. また,ピナコラートボラン骨格が,シラトラン骨格と同等あるいはそれ以上の性能を持つことを発見した.予想外の展開であり,今後の展開に期待が持てる.
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今後の研究の推進方策 |
ピナコラートボラン骨格に焦点を絞った研究を進めていく予定である.特に塩基フリーの鈴木宮浦カップリングやアリールスルフィドを基質とする反応など,夢は広がっている.
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次年度使用額が生じた理由 |
シラトラン骨格を有するケイ素反応剤を利用する研究が極めて順調に進んでおり,研究費が節約できている.現在論文を投稿中で,受理されれば大きなインパクトをもたらす成果となる.また節約できた研究費で新たにホウ素反応剤の研究に取り組み始めており,こちらも新たな成果につながる予定である.
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次年度使用額の使用計画 |
多くの研究者に広く公開するために,論文投稿料やオープンアクセス料が必要となる.またホウ素反応剤に関する新たな実験のために研究期間を延長したい.
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