ジボロンの代わりにヒドロボランを用いた場合に、ホウ素と塩素の間の相互作用によって、パラジウム上に水素が選択的に移動し、続く還元的脱離によって塩化アリールの還元反応が達成できると考えた。検討の結果、パラジウム触媒を用いたピナコールボランによる塩化アリールの還元反応が、塩基非存在下において円滑に進行することを見いだした。一般に、ヒドロボランはハロゲン化アリールとの反応において還元剤でなくボリル化反応剤として広く用いられている。ホウ素原子と塩素原子の相互作用を用いることにより、ボリル化反応から還元反応への選択性の逆転に成功した。 アリールシラン反応剤はクロスカップリング反応において非常に重要な役割を果たしており、様々なビアリールの合成に広く使用されている。シラトラン骨格のルイス酸性に鑑みると、塩基非存在下においてアリールシラトラン反応剤がパラジウム触媒を用いた塩化アリールの檜山カップリング反応に適用可能であると考えた。検討の結果、目的とする檜山カップリング反応の達成には、当初の想定とは異なり、フッ化物イオンなどの塩基の添加が必須であることがわかった。 これらの成果は、シラトランよりもピナコラートボリル基の方がルイス酸性が高く、塩基フリーのクロスカップリングに有効であることを示している。今後さらにルイス酸性を有する有機金属反応剤を精査することで、理想的なクロスカップリング反応の開発を検討していきたい。
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