本研究では、従来の二酸化炭素(O=C=O)の活性化とは逆の、“金属と炭素とが配位結合する”型式を経る二酸化炭素C=O結合の切断法を創出する。この逆型式の配位結合は、酸素親和性の高いケイ素やホウ素を配位子に持つ、遷移金属-ケイ素種、遷移金属-ホウ素種などの逆分極性金属反応種M(-)E(+)によってもたらされると想定した。 化学量論量のロジウムホスフィン錯体、二酸化炭素、酸素原子と優先的に作用し得るケイ素化合物の一つ、ヒドロシランとの反応より、低収率ながらロジウムカルボニル錯体が得られることを見出した。他に炭素源が存在しないことから、二酸化炭素からカルボニル配位子(CO)へ脱酸素化していることが分かった。次に、この組み合わせを基準に、ロジウム錯体を触媒量とし、有機基質、二酸化炭素、ヒドロシランの反応を実施したところ、二酸化炭素のカルボニル単位C=Oのみが有機基質に取り込まれた生成物が得られることを明らかにした。触媒反応中で発生していると考えられる活性中間体の捕捉には至らなかったが、この触媒反応でも、ヒドロシランおよびロジウム触媒から逆分極性金属種(ロジウム-ケイ素種)が作業仮説通り発生し、二酸化炭素の活性化につながったものと考えている。 今後は、触媒反応中でのロジウム-ケイ素種の発生効率の向上をもたらすよう、ロジウム中心の電子状態を精密に制御することが必要となる。例えば、より陰性に分極できるように、周辺配位子の電子求引性(電荷収容能)を大きくする、等が考えられ、それに見合った配位子の設計・合成が必須である。
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