研究実績の概要 |
(1) isotactic poly(methyl methacrylate) (it-PMMA) / syndiotactic (st) PMMA / atactic (at) PMMAオリゴマー系 平成26年度、it-, st-PMMAを少量at-PMMAオリゴマー単分子膜に可溶化させると、ガラス転移温度の低いat-PMMAオリゴマー単分子膜に可溶化されたit-,st-PMMA鎖が観察でき、さらに圧縮することにより、ステレオコンプレックスが形成できることを見出したが圧縮状態では孤立鎖そのものが凝集してしまうため、ステレオコンプレックスがどのように形成されているのかを明確に観察することができなかった。平成27年度の検討で、一旦圧縮して孤立鎖の一部がステレオコンプレックスを形成した後、再度圧力を低下させることで、at-PMMAオリゴマー単分子膜中でit-, st-PMMA孤立鎖が広がった状態分散し、その一部が会合してステレオコンプレックスを形成している構造を明瞭に観察することに成功した。 (2) st-PMMA / it-PMMAオリゴマー系 (1)の系は、3成分系のため、構造が複雑である。よりシンプルな系として高分子量st-PMMA孤立鎖をit-PMMAオリゴマー単分子膜に少量可溶化させた混合単分子膜を用いて、st-PMMA孤立鎖からのステレオコンプレックス形成挙動を検討した。その結果、ステレオコンプレックスの形成は、st-PMMA分子の端ではなく、途中から形成して成長し、st-PMMA鎖が消費されると生成したステレオコンプレックスが著しく凝集することがわかった。 (3) 以上、2つの系で孤立鎖状態からステレオコンプレックスが形成する過程を観察することに成功した。今後、さらに高倍での観察を検討することにより、特異な超分子多重らせん構造であるステレオコンプレックスの形成過程をさらに明らかにできるものと考える。
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