本研究の目的は、複核パラジウム錯体触媒を用い、イミンと一酸化炭素との共重合による新しいポリペプチド合成を達成することである。従来、ジホスフィン配位子やビピリジン配位子を有する単核パラジウム錯体による反応についての検討例があるが、この場合には安定なキレート錯体が生成し、ポリマーは得られないことが知られていた。本研究では、近接した二つの金属中心をもつ触媒により、イミンと一酸化炭素との共重合を目指して検討を行っている。昨年度までに環状配位子を有する複核パラジウム錯体を用い、種々のアルデヒドとアミンから誘導されたイミンと一酸化炭素との共重合について検討を行ったが、高分子は得られたものの、その構造は明らかにはなっていなかった。 今年度はヒドロキシ基を有するビピリジンを配位子とするパラジウム錯体を触媒として用いたイミンと一酸化炭素との共重合について検討を行った。パラジウムメチル錯体を合成することはできなかったものの、カチオン性πアリルパラジウム錯体の合成を行うことができた。得られた錯体を有機アルミニウムで処理することでアルミニウム中心を導入し、得られたパラジウムーアルミニウム複核錯体を用いてイミンと一酸化炭素との共重合について検討を行ったが、反応は進行しなかった。 一方で、類似の配位子をもつニッケル錯体やコバルト錯体は、有機アルミニウム助触媒の存在下でブタジエンの重合に比較的高い活性を示すことが明らかとなった。ニッケル錯体はブタジエンとノルボルネンとの共重合にも有効であることを見出した。
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