研究課題/領域番号 |
26620098
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
前田 勝浩 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (90303669)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | らせん / 共役高分子 / 自己集積 / キラル / フラーレン |
研究実績の概要 |
有機薄膜太陽電池は、飛躍的な低コスト化が可能な次世代太陽電池として注目されている。有機薄膜太陽電池の発電層は、p型及びn型有機半導体材料から構成されているが、2種類の半導体材料の混合形態(モルフォロジー)は時間とともに変化していき、それぞれの成分同士で集合するようになる。この「モルフォロジーの不安定性」こそが、「有機薄膜太陽電池の低い耐久性の主要因」に他ならない。有機薄膜太陽電池を実用化するためには、耐久性を高めることが絶対条件となるが、「モルフォロジー制御」の必要性に囚われている限り、実用に耐えうる太陽電池素子を開発することは非常に難しい。p型とn型の2種類の半導体材料を使用する限り、どうしてもモルフォロジー制御の必要性が生じる。本研究では、高分子系有機半導体に「両極性を賦与」するために、「らせん状コンホメーション」を利用し、らせん構造の「外部にp型主鎖」、「内部にn型フラーレン」を配置した、ホールと電子の両方のキャリアを輸送可能な「らせん状π共役高分子被覆型フラーレンからなる両極性半導体材料」の開発を目指した。単一の材料で発電層を構成することができれば、モルフォロジーを考慮する必要性がなく太陽電池性能の恒久化が達成できるものと期待される。 本年度は、らせん構造内部にフラーレンを内包可能ならせん状π共役高分子の合成法の確立を目指した。様々な芳香族ユニットをエチニル基で連結したπ共役高分子を合成し、らせん構造の形成の可能性について検討を行った。その結果、ビフェニレン-ジエチニレン共重合体の構造に相当する高分子が、疎溶媒効果によってらせん状に折りたたむことが各種の分光学的測定結果から示唆された。また、分子モデル計算の結果から、らせん構造の内側にフラーレンを内包するのに適した約1nm程度のキャビティーを有していることも示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画としてあげた、フラーレンを包接可能なキャビティーを内側に有するらせん状共役高分子の合成に成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に合成することに成功した、「疎溶媒効果によってらせん状コンホメーションへと折りたたむ共役高分子」のらせん構造の内側の空孔内にフラーレンを効率良く包接させる条件を検討することによって、らせん状π共役高分子被覆型フラーレンの構築方法を確立する。各種分光学的測定によって、フラーレンが内部空孔に密に包接されていることを確認する。また、他の構造のπ共役高分子についても合成を行い、らせん形成およびフラーレンの包接の可能性について検討を行う。さらに、得られた複合体の電子物性に関する知見を得るために、制限電荷空間電流法により電荷移動度等の評価を行う。
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