高分子系有機半導体に両極性を賦与するために、ポリマーが形成する「らせん状コンホメーション」を利用し、らせん構造の外部に「p型主鎖」、らせん構造の内部に「n型フラーレン」を配置したホールと電子の両方のキャリアを輸送可能な「らせん状π共役高分子被覆型フラーレンからなる両極性半導体材料」の開発を目指した。昨年度までに、クラウンエーテル部位を有するビフェニレン-ジエチニレン共重合体(poly-1)が、光学活性アミノ酸のアンモニウム塩との錯形成により、アセトニトリル含量が80%以上の溶媒中で疎溶媒効果によって一方向巻きのらせん状に折りたたむことを明らかにしている。今年度は、poly-1が形成するらせん構造の内側の空孔内にフラーレンを効率良く包接させる条件について詳細に検討を行った。その結果、光学活性アミノ酸存在下、poly-1とフラーレンをアセトニトリル含量が多い溶媒中で加熱処理することにより、フラーレンがアセトニトリルに可溶化し、フラーレンの吸収領域に明確な誘起円二色性を示すことが明らかになった。一方、poly-1がらせん構造を形成しないアセトニトリル含量が少ない溶媒中では、同様の操作を行ってもフラーレンは可溶化されなかった。以上の結果から、poly-1とフラーレンを光学活性アミノ酸存在下、アセトニトリル含量が多い溶媒中で加熱処理することにより、poly-1とアミノ酸の複合体が形成する一方向巻きのらせん空孔の内部にフラーレンが包接されることが明らかになった。
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