研究課題
平成27年度は解析対象界面として、OPVc素子とそのモデル構造を対象とした。電子(n)/正孔(p)輸送性半導体材料の組み合わせについて、①p/n junction界面での電荷輸送性、②正孔/電子それぞれの移動度バランスを最迅速診断、を推進した。特に本研究の核であるTRMC@Interfacesの特色を最大限に生かし、n型半導体・p型半導体の交互製膜を行い、それぞれの界面に蓄積された電子および正孔の選択的非接触非破壊定量に成功した。これらの成果は、応用物理学会・高分子討論会などで発表されたと同時に、5編を超える論文(Angew. Chem. Int. Ed.・Phys. Chem. Chem. Phys.など)に発表され、現在数報が投稿中である。雰囲気制御型TRMC@Interfacesでは、界面高分子構造の変調において最も重要な熱力学的パラメータである温度を中心に制御する実験を進め、計測系の整備を行った。この結果、200~450 K程度における温度変調範囲を実現し、低分子有機半導体の相転移・共役高分子の骨格持続長の変調に伴う電子伝導性の変化の追跡を行った。論文(J. Phys. Chem. B・J. Mater. Chem. Cなど)に発表され、現在数報が投稿中である。Grapheneを中心とした発達した2次元共役構造を持つ巨大分子についてTRMC@Interfacesによる評価を進めた。特にその積層構造よる電子伝導の特異性、電子・正孔の有効質量比について実験的・定量的に明らかとし、2次元電子系の特異な電子輸送状態を非接触で検証した。これらの結果は、応用物理学会・国際会議等で発表されたと同時に、現在論文を投稿準備中である。
1: 当初の計画以上に進展している
研究概要に示したように、平成27年度以降の研究計画として示した、① OPVcモデル素子における界面電荷輸送現象のTRMC@Interfacesによる追跡② 温度による界面高分子構造の変調とTRMC@Interfacesによる追跡③ 2次元発達共役系を有する巨大分子並びに低次元共役分子半導体のTRMC@Interfacesによる追跡のすべてにすでに着手し、論文・学会発表を進めるに至った。これを踏まえて、発達2次元共役系の電子輸送について、当初予測していなかった電荷担体の有効質量を決定するモデルについても検討を始めており、当初の計画以上に進展していると考える。
現在までに研究計画は非常に順調に進んでおり、すでに27年以降の研究計画のほとんどを達成または着手している。最終年度に向けてGrapheneを中心とした発達した2次元共役構造を持つ巨大分子についてTRMC@Interfacesによる評価をさらに進める。また、特に重要となる温度変調下における計測の範囲を可能な限り拡張すると同時に、高分子骨格の構造変調の定量評価について、GI-SAXS/WAXSに代表されるX線構造解析技術との協奏を進めたい。
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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http://www.moleng.kyoto-u.ac.jp/~moleng_06/index-j.htm