本課題では、簡便かつ迅速なUV硬化反応に敢えて「光駆動型」の精密ラジカル重合機構を組み込むことで、時間軸を制御し、硬化膜の表面ナノ凹凸構造の付与、および内部にブロック共重合体のミクロ相分離に代表されるナノ構造を同時(その場)形成することで新たな機能性コーティングとしての展開を目的としている。 本研究では光学フィルム等への展開を意識して、金属触媒の残存ないヨウ素移動型の精密ラジカル重合に着目した。有機触媒存在下、光照射で重合を開始・制御できるC-I末端を持ち、かつ取り扱いやすい化学安定性を持つ高分子ドーマントの開発に成功した。得られた高分子ドーマントを第二モノマーに溶解し、架橋剤を加えUV硬化させると透明な硬化膜を与えた。一方、C-I末端を持たない高分子を添加し従来法でUV硬化すると、数~数十ミクロンのマクロ相分離に留まり白濁する。断面の原子間力顕微鏡(AFM)像、3次元透過電子顕微鏡(TEM)像からは、数~数十nmのドメインサイズで膜の深部に向かって徐々に大きくなるユニークな共連続傾斜ミクロ相分離構造の形成を明らかにした。またエポキシ側鎖を持つ高分子ドーマントを適用などナノ構造形成したドメインのポスト機能化も見出している。本手法は、熱駆動のRAFT重合などと比べ形成時間の速さ(数秒で硬化と同時に相分離形成)や着色フリーなどの優位性を持ち、リソグラフィー技術との組合せなどパターニングも容易で、各種光学フィルム、コーティング、多孔分離膜など幅広い展開が期待できる。
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