研究課題
本研究は、多原子X線共鳴ラマン分光法(MARXR)を提案し、これを実証することを目的に実験を行う。MARXRは、表面金属の吸収端に共鳴させたX線を用いて、表面金属と結合した軽元素吸着種の周辺構造を選択的に観測できる手法として期待される。平成26年度は、以下の二つについて、検討を行った。1. X線自由電子レーザ(XFEL)を用いた蛍光X線吸収微細構造(FXAFS)測定の可能性の検討:MARXR法では、XFELを光源とすることを計画している。MARXR法を検討する中で、MARXR法の基礎となるFXAFSがXFELを光源として測定可能であるかを検証することが第1段階として必要であることが分かった。そこで、まずFXAFSの可能性をWO3を懸濁した溶液に入れ、溶液を循環させながら、測定を行った。様々な試行錯誤の結果、FXAFSを測定できることを実証した。さらに、1psの高時間分解能を達成することもわかり、MARXR法の可能性の第1歩を築いた。一方、X線分光による蛍光XAFS測定についてもラウエ型検出器(BCLA)検出器を自作して、つくばにあるPhoton Factory放射光施設で高感度のXAFS測定に成功した。現在これを改良している。SPringー8 BL36XUの高機能ビームラインの利用により、さらなる高感度化を実現した。2. MARXRプロセスの理論的検討理論的な検討の結果、MARXR法が基本としているMARPE法では、中心対称性では信号が出ないことが分かった。当初計画していたPt(CO)6ではなく、別の物質を検討することになった。また、詳細な理論計算が進行中である。
2: おおむね順調に進展している
理由:世界にまだ成功した者がおらず、上記に記した通りの予想外の新しい障害が現れた。しかし、その障害も克服できた。また、理論的な検討についても前例がないことから、困難を極めていたが、26年度後半になって、かなりめどが立ってきたため、(2)と判定した。今後、早急にMARXRの検証実験そして、実用化実験を行う予定である。
今後の計画1.理論的検討の完成:現在MARXRの理論的検討を行っており、具体的なサンプルについて、その計算を行っている。これにより、効率や検出条件および信号の解釈などについての基本的な情報をえる。また、より検出しやすい条件や物質を検討する2. 放射光をもちいたMARXRの検出:まず NW36XUにおいて、MARR現象が起こるかの検討を行う。サンプルとしてはC上のPtナノ粒子、水溶液中のWO3、Cu(DM)2である。また、理論計算の結果適当なサンプルや条件が見つかれば、適宜それに対象を変更して実験を行う。それぞれの中心金属吸収端に波長を合わせて、ラマンの測定を行う。3. XFELによるMARXRの時間分解測定、放射光の経験を元にXFELを用いて、MARXRの時間分解測定を試みる。対象としては電気化学電極の吸着種の電位ジャンプに対応する構造変化および応答である。
今年度、電気化学的測定について、新たにシステム構築を行う予定であったが、理論的な検討および予備実験を優先した。また、電気化学的システムも新規購入しないで、旧来のシステムを流用する等でなんとかできそうなめどが立ってきたため、今年度は購入を見合わせた。
薬品購入などの消耗品 40万、旅費 60万、人件費50万、その他35万を計画している。
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Phys Chem Chem Phys
巻: 16 ページ: 13748 13754
10.1039/C4CP00265B
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~q16691/index.html