研究課題/領域番号 |
26620113
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
内田 秀和 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60223559)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電気化学イメージセンサ / 酸化還元電流 / 酵素 / スクリーニング |
研究実績の概要 |
新薬の開発に有効な多数のサンプルを高効率に並列分析できる技術を確立することを目的として、電気化学イメージングセンサを用いたマイクロ計測法を開発し、モデルケースとなる実験を行った。ターゲットとなる酵素であるADH(アルコールデヒドロゲナーゼ)を表面に固定化したマイクロビーズを電気化学イメージングセンサの表面に展開したのち、エタノールと試薬を含むアガロースゲルをセンサ表面に密着させて酵素反応を示す酸化還元電流の二次元マップの測定に成功した。 測定結果はビーズがある領域ではビーズのない領域に比べて高い酸化還元電流値を示しており、ビーズの存在を区別できることが明らかになった。これはビーズ表面に固定化された酵素が正常に機能していることを本センサによる測定で確認できたことを示しており、なおかつ、機能しているビーズの位置を画像として知ることができることを意味している。 作成したセンサシステムで活性ビーズ単体の位置を特定するには機器の画像分解能が不十分であることが判明した。そこで、画像分解能を向上させる方法について検討を進め、次年度の研究計画に含めることとした。 また、活性ビーズ単体の反応を検出するには検出感度が不足している可能性が示唆された。究極的な目標としては単一酵素の活性検知も望まれることから、検出感度の向上は重要な意味を持つ。実験結果から以下の2つの手法が期待されることがわかった。一つはゲルの密度を上げて、産生分子の拡散を抑えること、もう一つはゲルに含有させる試薬を変更して電気化学測定の感度を向上させる手法である。これらを次年度の研究方法に取り入れてシステムの開発を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
測定システムを完成させ、酵素活性の二次元測定を実現できたことで、重要な目標は達成できている。 しかし、当初予定していた酵素阻害剤による酵素活性低下を観測する実験までは実現できていないため、若干進捗が遅れていると判断できる。 酵素阻害剤による酵素活性低下の観測は活性評価が確実にできる状態でなければ実行できないため、システムの完成と酵素反応の測定プロセスの確立を優先させたことにより進捗に遅れが出た。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の研究に取り組むにあたり、目標を達成するために残っている課題の解決を目指す。目標である分子スクリーニングをビーズ単位で行うためには、個々のビーズに固定化した酵素の活性を区別して測定できる必要がある。現状では複数のビーズが存在する領域全体の活性の有無を判断できるレベルまで到達しているものの、個々のビーズの反応を分離して捉えるためには2つの課題をクリアする必要がある。 一つは、システムの画像分解能の不足である。これは、システムを制御するPCが古く32bit CPUであったため、画像を構成する膨大なデータを処理できず、解像度に制限が出てしまったのが理由であった。そこで、今後はPCハードウェアの交換と制御用ソフトの最適化を行い、高解像度の画像測定の実現を目指す。 二つ目は検出感度が不足している可能性が考えられる。現在は酵素反応による産生物質の拡散を抑えてビーズ周辺にとどめるため、濃度1%のゲルを使用しているが、比較的ゲルの密度が低いため、拡散の抑止が十分でないと考えられる。そこで、ゲルの密度を上げて隣接するビーズとの分離を向上させる方法を試みる。また、これまでゲル全体に含有させていた酵素の基質とメディエータを排除し、ゲルの多層化などによりビーズ近傍にだけ基質とメディエータを配置する手法を試みる。これは従来の電気化学測定において、対極を反応セルから隔離する概念と同じであり、対極上での不要な反応により観測電流が妨害を受けないようにする試みである。 以上の課題を克服する研究を進めるとともに、新しく酵素阻害剤の効果を判別するモデル実験を進め、本システムの有効性を実証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文執筆が間に合わないため、翌年度投稿予定となった。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した「その他」費目は予定している論文の投稿費用として支出予定である。 翌年度分として請求した助成金は予定どおり支出する予定で、変更はない。
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