研究課題/領域番号 |
26620116
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
火原 彰秀 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (30312995)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マイクロ流体 / 前処理 / 分配 / 自然乳化 / マイクロ液滴 / ナノ液滴 |
研究実績の概要 |
本研究では、近年注目を集めているマイクロ流路内のマイクロ液滴を用いた分析操作を研究する。特に、マイクロ液滴の自然乳化過程の理解、マイクロ・ナノ液滴間の分離操作の確立、ナノ液滴及びマイクロ液滴の分析応用を目的とする。 自然乳化によるナノ液滴生成には、界面不安定性による内部液滴切り取り、液滴へのミセル吸着により生成した親水空間に水が分配する過程などが提案されている。ここでは、後者の油相中ミセル(逆ミセル)内の親水空間への水分配過程に注目して研究を進めた。 平成26年度は、界面活性剤としてSPAN80を含む油相を連続相、水相を分散相としてマイクロ液滴生成条件を検討した。マイクロ流路内で生成したマイクロ液滴を流路底面に沈降させた後、連続相をゆっくり流すことで自然乳化によるミセルのナノ液滴化が観測された。この自然乳化過程の界面活性剤濃度依存を検討したところ、界面活性剤濃度が高いほど高速にマイクロ液滴が収縮し、効率的に水相がナノ液滴運ばれることが分かった。また、マイクロ液滴水相の初期塩強度依存を検討したところ、初期塩強度が高いほど自然乳化終了後のマイクロ液滴径が大きくなった。このことは、自然乳化過程にミセルの水和と浸透圧が関わっていることが強く示唆された。 マイクロ液滴内に溶質が存在する場合、その分子量と疎水性により分配挙動が異なった。小さな疎水性分子は、自然乳化時に水とともにナノ液滴側に分配される傾向にあった。親水性分子あるいは高分子は定量的に濃縮できた。この傾向を利用して、蛍光ラベル化ビオチンがナノ液滴に分配される過程のアビジン濃度依存を観測できた。これらの結果により、自然乳化過程中の水水分配過程が濃縮分離といった前処理に利用可能であることを示せた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の目標である乳化条件の検討を十分行うことができた。また、溶質の分配の様子も、当初の予想よりも簡単に傾向をつかむことができた。マイクロ流体中での新規な濃縮分離法としての可能性を示し、分析応用を検討する段階まで進むことができた。期待以上に進展したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は予定通り、1)マイクロ液滴・ナノ液滴のデバイス内分離、2)濃縮率の向上の検討、3)単一分子検出の検討を進める。また、それに加えて平成26年度の方法を拡張し、イムノアッセイの実現を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予想では分配過程を解明するために高感度CCDが必要であることが考えていたが、予想に反して現状の通常CCDで計測できる範囲でメカニズムを検討できた。そのため、2年間の研究期間中に分析応用を検討するために、イムノアッセイなどの分析系を検討中である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、分析応用を進めるために予定していたよりも現実的な分析に近い、イムノアッセイなどを検討する。このための予備検討の比較的高価な試薬が必要となる。予備検討の結果次第で、検出系を充実させる必要が生じる可能性もある。
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