平坦な基板上に滴下した液滴の振動を、ミクロ構造の振動解析のモデルケースとして研究した。外力により力学的に振動させた液滴をレーザー光で照射し、散乱光を光ヘテロダイン計測することにより固有振動数を求めた。球の一部で近似される形状を有する液滴の子午断面の円弧に沿ってキャピラリー波が定在していると考えるモデルを、空気中、デカン中およびシクロヘキサン中の水滴の他、1-ヘプタノール中の水滴についても適用したところ、後三者の油中の水滴については、固有振動数は水滴と基板の接触線を固定端とする境界条件を設定することで説明されるが、空気中の水滴の場合は固定端とする境界条件では定量的に説明できないことを明らかにした。 このような水滴の固有振動の性質をさらに詳しく調べるため、水滴の振動を高速度カメラで撮影した。水滴を撮影した画像の輪郭を抽出すると、水滴の輪郭は円の一部(円弧)でよく近似された。振動により水滴の輪郭が変形して円弧からずれたとき、この変形を円の半径方向の変位として求め、円弧の頂点からの長さに対してプロットしたところ、水滴の周囲の環境によらず、いずれの場合も正弦波でよく近似できた。ただし、水滴が各種油中にあるときには、円弧の端、つまり基板との接触点が正弦波の節と一致したのに対し、空気中にある場合には円弧の端は正弦波の節から大きくずれたところに位置することがわかり、両者で異なる境界条件を考える必要があることが裏付けられた。 微小な物体の固有振動は、力学的性質と大きさや形状によって決まると考えられるが、周囲の環境によって影響を受ける境界条件にも注意する必要があることが示された。
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