研究課題/領域番号 |
26620127
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鍋島 達弥 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80198374)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バイオイメージング / 発光性分子 / センサー / 超分子 |
研究実績の概要 |
媒体の極性に応答して両親媒性部位による包接のオン-オフが起こる「分子コート」の概念の提唱と実証を目指して、界面を介した物質輸送における新機軸の手法の基礎を築くことを目的として検討を行った。ホスト部位には構造反転によるゲストの包接が可能なメチル化シクロデキストリン類を、発光部には優れた発光特性をもつジピリンのホウ素錯体を用いることで、水系溶媒中においては分子内包接錯体を形成するが、非極性媒体中では解離する分子システムを構築する。 本年度はジピリンホウ素錯体を導入したメチル化シクロデキストリンの合成とその同定、および光学特性について測定を行った。β―シクロデキストリンを既知の方法に従って化学修飾し、1つの一級水酸基を残し、他の水酸基がメチル化されたシクロデキストリン誘導体を合成した。発光部となるジピリンホウ素錯体の配位子にはチオフェンを導入したジピリンを選び合成した。この含チオフェンジピリンホウ素錯体は発光特性が通常のジピリンホウ素錯体よりも長波長側にあり、バイオイメージングには適した分子となり得るからである。またこのジピリンのペリ位にはp-ヒドロキシフェニル基を導入し、上記のモノヒドロキシシクロデキストリンから得られたトシル体と反応させることで目的の発光部位を導入した化合物を合成した。同定は核磁気共鳴スペクトルや質量分析により行った。またこの化合物は600 nm以上に吸収および発光を有し、発光の量子収率はクロロホルム中で、約0.8と非常に高いことがわかった。現在、構造および光学特性の溶媒依存性について検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初設計した蛍光性プローブを導入したメチル化シクロデキストリンのための、良好な収率の合成経路を確立することができた。得られた化合物の構造も各種分光学的手法により確定することができた。また吸収および発光スペクトルの測定から、ジピリンのホウ素錯体をシクロデキストリンに導入することでその優れた光学特性は損なわれることなく維持されていることも明らかにすることができた。「分子コート」機能についての検討やバイオイメージングへの展開についてまさに開始できる段階で次年度を迎えることができたので、概ね順調に研究は推進できていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に合成を行った含チオフェンジピリンホウ素錯体を導入したメチル化シクロデキストリンの各種溶媒に対する溶解度を調べるとともに、水系溶媒における構造や光学特性を核磁気共鳴スペクトルや電子吸収スペクトル、蛍光スペクトル、絶対量子収率の測定等を行って調べ、目指した分子内包接が起こるかどうかについて検討する。水系溶媒に対する溶解度に問題がある場合は、ジピリン骨格へのオリゴエチレングリコール鎖の導入、シクロデキストリンとジピリンホウ素錯体間へのスペーサーの導入などによって構造最適化を行う。また、ジピリンのホウ素錯体の二量体についても同様の検討を行い、バイオイメージングに適した発光性分子の創出を図る。
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