研究課題/領域番号 |
26620128
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小澤 岳昌 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40302806)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Akt / ERK / リン酸化 |
研究実績の概要 |
光制御可能なAkt/PKBを開発した.Aktの局在変化を光制御する目的で,光感受によってヘテロ二量体を形成することが報告されているタンパク質CRY2およびCIBNを利用した.光照射にともなうCRY2-Aktの細胞膜上への移行を蛍光顕微鏡により確認した.光強度,照射時間を変え,膜への移行速度,および膜からの解離速度を定量的に解析した.光強度,照射時間,光パルス照射回数を様々変え,リン酸化の程度をwestern blottingにより定量評価した.光の照射回数とAktの活性化とを相関づける数理モデルを構築した.構築した数理モデルが,Aktのリン酸化と脱リン酸化過程の実験データを,忠実にさいげんすることを立証した. 平行して,光制御可能なRafを開発した.N末側のc-Rafには,CIBNを連結し細胞膜に局在させた.C末側のc-Rafには,CRY2を連結した.光照射にともない,C末側のc-Rafは細胞膜に局在することを,蛍光顕微鏡により確認した.Aktの場合と同様に,光強度,照射時間,光パルス間隔を変え,膜への移行速度,および膜からの解離速度を定量的に解析した.さらにその下流タンパク質であるERKのリン酸化を,MEFと同様にウェスタンブロッティングにより検証した結果,光照射パルス回数に依存して,ERKのリン酸化が増大することを明かにした.今後は,光照射回数とERKリン酸化量とを相関づける数理モデルを構築する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課題1では,Aktの光活性化モジュール作成に成功し,定量的なデータ取得を終えている.H27年度計画の光照射回数とAktキナーゼ活性を相関づける数理モデル構築まで終えている.様々なAkt活性化パターンに伴う遺伝子発現解析を勧めており,当初の計画以上に研究が進展している.
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今後の研究の推進方策 |
研究1で開発する光応答性Akt/PKBを利用して,Akt/PKB活性化の強度および時間を制御する.具体的には,(a) 強い一過的(パルス状)の活性化状態,(b)および15~30分周期のパルス状活性化状態,(c) 弱い持続的な活性化状態,の3パターンのAktの活性化状態を光により作り出す.その時のG6Pase,PEPCK,SREBP1,FASの遺伝子発現解析を,レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ)により解析する.同様に,c-Rafについて,光照射をa~cの3パターン作りだし,それぞれの遺伝子発現解析を行う.どうようにRafを様々な光照射パターンにより活性化し,その時の遺伝子発現を解析する.網羅的な遺伝子発現解析をgene chipを用いて,また代謝物をメタボローム解析によりデータ取得する..
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次年度使用額が生じた理由 |
AktおよびRafの光操作を行う実験にて,その細胞内局在を検証するために共焦点レーザー走査型蛍光顕微鏡を利用する.平成26年度は建物改修の完了にともない顕微鏡を新たな建物に移設する必要があった.大型装置の搬入ならびに保守点検などに2ヶ月を必要とし,その結果Rafの光操作実験において一部の実験に遅延が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用を予定している703,831円については,rafの光操作課題について,そのプローブの細胞内局在解析をはじめとする機能評価のために,消耗品物品費として使用する計画である.
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