研究実績の概要 |
インスリンシグナリングの2つの重要な情報伝達経路にフォーカスし,その鍵分子となるAktおよびc-Rafのキナーゼ活性を外部光により制御する技術を開発した. 光受容タンパク質CRY2をAktと融合することにより,光感受性のある人工Aktを作製した.光照射によってAktが細胞膜へ移行するように分子をデザインした.作製した光感受性Aktを細胞内に発現させ,細胞外から光を照射したところ,光感受性Aktが分単位の時間スケールで可逆的に活性化することが確認できた.光照射に伴いFox01が核から細胞質に局在変化することが確認された. さらに Fox01によってその発現が制御される遺伝子Atrogin-1の発現量が光照射に伴い減少した. 次にAktの時間的な活性を記述する数理モデルを構築した.Western blotによる実験データに基づき,人工光感受性Aktの活性の時間的な変動を表す数理モデルの構築に成功した.構築した数理モデルでは,さまざまな光照射パターンに伴うAkt活性の変動を正しく予測することが確認できる. さらに,ERK を赤色光で活性化する光活性型Raf (PA-Raf) 系を構築した.赤色光照射により膜上のPhyB にPIF-Raf 融合タンパク質が移行する系を構築した. Western blot により各融合タンパク質を導入した細胞において赤色光照射後のERK のリン酸化量を定量した. 結果,光照射にともない,ERKが選択的にリン酸化されることを実証した. 以上から,AktとERKを異なる波長の光で独立して活性化する技術を確立した.
|