研究課題
本研究では、蛋白質の自己集積体である蛋白質結晶から特異な構造体を切り出す「蛋白質結晶エッチング法」を新たに確立し、2D、3Dの蛋白質超分子構造体の機能化を目指す。近年、蛋白質をビルディングブロックとして共有結合やリガンドとの相互作用を用いたボトムアップ法による超分子構造体が報告されているものの、機能化の報告はほとんど例がない。その理由は、蛋白質のボトムアップ法により形成されるリングやチューブ、ケージ等の構造安定化や機能設計が困難なためである。本研究では、タンパク質が結晶化する際に形成する集積構造の高い対称性を利用し、タンパク質結晶から望みの構造体を切り出すタンパク質超分子構造体を作成し、結晶構造を基にした分子設計を行うことにより、今までにない新しい機能性超分子構造体の構築手法となりうる。H26年度は、細胞内で結晶化する多角体結晶のナノカップ構造に着目し、結晶構造を基に単量体間をジスルフィド結合で架橋化できる位置にシステインを変異導入した。得られた変異体結晶を過酸化水素で酸化、架橋化し、溶解することによりナノカップ構造を水溶液中へ切り出すことに成功している。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、タンパク質の自己集積体であるタンパク質結晶から特異な構造体を切り出す「タンパク質結晶エッチング法」を新たに確立し、超分子構造体の機能化を目指す。本年度は、当初の計画とはタンパク質が異なるが、多角体結晶のカップ構造に着目しジスルフィド結合をアミノ酸置換により導入することでカップ構造の切り出しに成功した。本手法を実証することができたため、おおむね順調に進展していると考える。
H26年度は、多角体結晶のカップ構造を結晶から切り出し、構造体の各種分析による同定を行った。次年度は、切り出したカップ構造体の機能化を試みる。カップ構造は、内部に数ナノの空間を有しているため、内部空間の特異な環境を利用した蛍光色素の光化学的物性の制御を試みる。また、本手法の有用性を示すため、多角体以外のタンパク質結晶へも適用する。具体的には、ヘムタンパク質であるミオグロビンのリング、チューブ構造の構築を目指す。以上の実験結果から得られた成果を学術論文、学会等で発表する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)
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