研究課題/領域番号 |
26620133
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
遠藤 政幸 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 准教授 (70335389)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | DNA / ナノ構造体 / DNAオリガミ / 光機能性 / 原子間力顕微鏡 / デリバリー / 細胞機能制御 |
研究実績の概要 |
本研究では、DNAによって様々な3次元構造体を設計・機能化し、ナノサイズの機能性DNA構造体を細胞応答へと応用するための基礎技術を作ることを目的とし、高度な機能性を発現できるDNA分子システムの開発を検討した。この機能性DNAナノ構造体は外部からの操作で構造変換を行え、この構造体を使って金粒子の包摂と放出や酵素活性の制御を行う新たな分子システムを開発した。これらの機能化したDNAナノ構造体を細胞内への新規な生体分子のデリバリーに使い、アポトーシス(細胞死)の誘導、遺伝子発現の抑制、免疫増強など細胞応答に応用する。 2つの四角錐構造からなる1辺50 nmの八面体のDNA構造体(ナノカプセルL)を構築し、光応答性DNA鎖を導入し、構造体の開閉を光照射により制御した。構造体は設計どおりに構築され、開閉は電気泳動による移動度の違いとAFMによる構造変化によって確認した。UV光または可視光の照射によって開閉が繰り返し制御できることも確認した。次に、ナノカプセル内への10 nmの金ナノ粒子の導入と放出の制御を行った。導入には金粒子のDNAによる修飾とカプセル内への相補鎖を導入することで、開いた状態のカプセル内に金粒子を固定した。光照射によってナノカプセルを閉じ、電子顕微鏡によってその構造を解析した。閉じたカプセル内には金粒子が約50%包摂されることが確かめられた。次に、UV光照射によってカプセルを開き、金粒子を放出するためのDNA鎖を添加した。この結果、ほぼすべての金粒子が放出された。また、カプセルを閉じた状態では金粒子の放出が抑制された。これらの結果から、DNA構造体に比較的大きなナノ材料を導入でき、開閉によってその包摂や放出を制御できる分子システムの開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した外部刺激に応答できるDNAナノ構造体‐ナノ材料・酵素複合体を設計どおり構築し、光照射による構造体の開閉を制御しDNA構造体の形態変化によって機能発現できる新たな分子システムを開発できたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、作成した光応答性の機能化したDNAナノ構造体をキャリアーとして、細胞に導入し、細胞内部の環境に応答して細胞機能発現の誘導を行える分子システムを構築する。また、提案したもうひとつの構造体の構築を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は細胞培養を行っていないため、経費に残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は細胞培養を行うため、当初のとおりの経費を使用する予定である。
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