我々が既に開発した固相合成手法により適宜水溶性置換基(グルタミン酸、トリエチレングリコール)を配したRu-Pt-Rhアレイを合成し、十分な水溶性を有することを確認した。一方、カチオン性金属錯体であるRuやPt錯体のカウンターアニオンの種類により、この分子は自己会合することが透析実験やTEM観察、DLSの結果明らかになった。例えば塩素イオンやリン酸イオンの共存下では、直径100nm程度の会合体の形成が認められたのに対し、トリフルオロ酢酸アニオンの共存下では会合は進行しなかった。 次に作成したRu-Pt-Rhアレイのアミロイド繊維形成阻害能について、アルツハイマー症との関連が疑われている代表的なアミロイド化ペプチドであるアミロイドβペプチドを用いて検討した。その結果、アレイの共存によりペプチドのアミロイド繊維形成が効果的に阻害されることが蛍光分子を用いた評価やDLSの結果分かった。さらに、あらかじめ形成したアミロイド繊維の分解も同様の条件下アレイの共存により可能であることを確認した。CDスペクトル測定において、アミロイド繊維中のアミロイドβペプチドは典型的なβシート構造のパターンを示すのの対し、アレイを添加し繊維の形成阻害・分解がなされた試料においてはランダムコイルのパターンを示すことから、アレイがβシート阻害剤として機能した結果、アミロイド繊維の形成阻害・分解が起きていることが示された。
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