前年度に見出した水溶性ペプチド金属錯体アレイの水溶液中での自己集合挙動を詳細に検討した結果、ペプチドやたんぱく質の凝集を引き起こすアニオン種の系列として一般的に知られるホフマイスター系列とは逆のアニオン依存性を示すことが分かり、側鎖の複数のカチオン性金属錯体と共存アニオン間の相互作用が自己集合挙動に大きく影響することが示唆された。また、類似の錯体アレイとの比較から、Ru-Pt-Rhという金属錯体のシークエンスが自己集合挙動に重要であることが示された。また、金属錯体アレイの集合挙動は疎水性・水溶性の色素の添加に鋭敏に応答することが観察され、共存分子との会合体形成を起こしやすい性質が示唆された。これを踏まえて、比較的疎水性の高いアミロイド形成ペプチドであるTTR1ペプチドに対する金属錯体アレイの抗アミロイド活性を評価したところ、光散乱、CD測定やTEM観察から両者が複合体を形成することによりTTR1ペプチドのアミロイド化の阻害・アミロイド繊維の分解が可能であることが分かった。TTR1ペプチドに対する抗アミロイド活性をもたらす構造因子を知るために種々の参照化合物を用いて抗アミロイド活性を評価したところ、アミノ酸部位を持たないRuやPt錯体は抗アミロイド作用を示さない一方、類似のペプチド構造で錯体が連結されたRu-Ptアレイでは抗アミロイド作用が確認できた。これらの結果はペプチドで錯体が連結されたペプチド金属錯体アレイ構造の重要性を示している。
|