研究課題
昨年度構築した緑膿菌をホストとする一酸化窒素還元酵素(cNOR)の発現システムを用いて、in vivoでの変異体活性測定を行った。すなわち、活性のあるcNOR変異体が発現すれば、緑膿菌を生育し、不活性なcNOR変異体が発現すれば緑膿菌は生育しなかった。このシステムを用いて、NO産生酵素である亜硝酸還元酵素NiRとcNORとの複合体形成において重要と思われるアミノ酸(Glu119)に変異を入れたcNORを導入した緑膿菌の生育実験を行った。緑膿菌の生育は明らかに遅くなり、精製したGlu119変異酵素のNO還元活性を測定すると、高い活性を保持していた。これらの結果から、cNORのGlu119はNiRとNORの複合体の形成に重要な役割を果たしており、この複合体形成が菌体内にNOを拡散させない重要なシステムであると結論した。現在、NiR-cNOR複合体構造を基盤にした分子動力学計算を行っており、この複合体形成にはGlu119を通したNiR-cNOR相互作用だけでなく、NiRと生体膜との相互作用も重要な役割を果たしている事が明らかになって来た。NiR-cNORと電子供与体(アズリン、チトクロムc551)との三者複合体の結晶化にも取り組んでいるが、未だ成功していない。そこで、このような複合体形成を理解する上での基礎知識となる、電子供与体からcNORおよびNiR-cNORへの電子移動反応の解析を現在行っている。
2: おおむね順調に進展している
緑膿菌をホストとした変異体の調製が可能となった事は大きな成果である。これにより複合体形成に重要なアミノ酸を同定できるようになった。NiR-cNORと電子供与体との三者複合体の結晶化が未だ成功していない。超分子複合体になるので、クライオ電顕での構造決定を考え、専門家に試料作製に関して共同研究を開始した。分子動力学と量子化学計算が本格的に稼働し、NiR-cNOR複合体のシミュレーションが出来るようになった。
基本的には今までと同様な方向性で研究を進め、その進展をさらに加速する。NiR-cNORと電子供与体との三者複合体のクライオ電顕測定用の試料作製を試みる。二者のみならず三者複合体の分子動力学シミュレーションにも挑戦し、その安定化の要因や、生理的な意義に関しての情報を得る。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (2件)
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