研究課題/領域番号 |
26620141
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
城田 幸一郎 独立行政法人理化学研究所, 小林脂質生物学研究室, 先任研究員 (00291071)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脂質 / 細胞膜 / 光ピンセット / 表面増強ラマン |
研究実績の概要 |
細胞膜は流動的で、不均一な脂質二分子膜であり、外側と内側の膜は非対称である。この膜機能を十分に理解するためには、ナノメートルスケールで、生体膜内外層における脂質分布を観察する必要がある。本研究では、光トラップした金属ナノ粒子をプローブとし、トラップした金属ナノ粒子の高さ位置を変えることで膜の表裏の信号を分離し、金属ナノ粒子の局在型表面プラズモンによって局所的に増強されたラマン信号を検出することにより、細胞膜の内側・外側の脂質配列を用いる粒径程度の分解能でイメージングする計画である。本手法により、生体膜ナノドメインの実体を観察し、脂質ラフトの構造・機能を探ることが目的としている。
平成26年度は、現有の顕微ラマン光学系に、近赤外レーザー光を同軸で入射できるようにし、光ピンセットシステムを付加した。これにより、近赤外光でトラップした金属ナノ粒子による表面増強ラマン(SERS)が測定の準備が整った。装置的には、現有している自作ラマン顕微鏡の右サイドポートから波長1064 nmのYVO4レーザーを導入して、高開口数の対物レンズで集光することで、勾配力により金属ナノ粒子を光トラップできるようにした。プローブに用いる金属ナノ粒子は、Brust法を用いて粒径10 nmまでの粒子を作製し、それを越える粒径の粒子は塩化金酸をクエン酸3ナトリウム2水和物を還元剤として用いるFrens法により作製することにより、粒径2~100 nmの金ナノ粒子を準備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の主な研究計画は、近赤外光でトラップした金属ナノ粒子をプローブとして表面増強ラマン(SERS)が測定できる顕微鏡を構築することであった。装置とプローブの準備に関しては、計画通りに進めることができた。さらに、光トラップした単一球をプローブとして、ベシクルやリポソームのSERS測定に関する予備実験を行うことになっていたが、これについてはこれから進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、まず、光トラップした単一球をプローブとして、ベシクルやリポソームのSERS測定を試みる。金ナノ粒子の粒径を大きくすることで増強度を上げることができるが、面内分解能の低下が予想されるので、最適な実験条件を探索する。次に、非対称リポソームを作製して、膜の非対称性や表裏を見分けることに挑戦する。また、昨年度から本計画を進めている中で、スフィンゴ脂質の1つであるスフィンゴミエリンについてラマン分光によって興味深い結果が出てきているので、こちらにも注力することにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
金属ナノ粒子を用いてた表面増強ラマンの事前準備として、市販のSERS用測定基板を用いて、脂質分子の表面増強ラマンを測定する予定であった。しかし、購入を予定していたSERS基板の製造企業が、基板の製造を中止してしまったためにSERS基板を購入することができなかった。そのため、この事前検討を進めることができなかったために使用残額が生じた。幸い他社が製造しているSERS基板が評価に使えることが分かったので、こちらを購入して予定通り計画を進めていく予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度の残額は、上記のSERS用基板の購入、および、この基板に合わせた励起レーザー光源、光学部品の購入に使用し、本年度の予算は計画通り、非対称膜のSERS測定に用いる。
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