研究課題/領域番号 |
26620148
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
宍戸 哲也 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (80294536)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光触媒 / 選択酸化 / バイオマス |
研究実績の概要 |
一般的な酸化物半導体型光触媒の触媒作用はバンドギャップ以上の光エネルギーを吸収することにより生成する励起電子と正孔に由来する.一方,我々は,基質と酸化ニオブからなる表面錯合体由来のドナー準位から酸化物の伝導体への光励起による特異な活性化機構(in situ doping)を提案している.また,この酸化ニオブ(Nb2O5)の特異な活性化機構を利用することで可視光照射下においてアルコール及びアミンを高選択的に対応するアルデヒドあるいはイミンに変換できることを報告している.そこで本研究では酸化ニオブ光触媒の特異な光触媒作用を種々のファインケミカルズ合成に展開することを目的とし,C-NカップリングおよびC-Oカップリング反応を検討した.具体的には2-アミノベンジルアミンとベンズアルデヒドを基質とするC-Nカップリング反応を1気圧の酸素雰囲気下で可視光を照射し検討した.さらにC-Oカップリング反応は,各種アルコールと2,4,6,-トリメチルフェノールを基質とする非対称エーテル生成をモデル反応として検討を行った.C-NカップリングおよびC-Oカップリング反応は、酸化ニオブを光触媒として用いると可視光照射下で効率よく進行することを見出した。次に、酸化ニオブを光触媒とするグリセロール酸化について検討を行った。可視光照射下では、ほとんど反応が進行しなかった。紫外光照射下では、僅かに酸化反応が進行し第1級水酸基が酸化された対応するアルデヒド、およびカルボン酸が進行することを見出した。また、酸化ニオブの調製法を工夫することで比表面積を増加させた酸化ニオブを調製したところ活性が向上した。これは、比表面積が増加することで基質の吸着量が増加し、その結果、活性錯合体の量が増加したことによると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,未修飾の酸化ニオブを基本としてC-NカップリングおよびC-Oカップリング反応を検討した。また、モデル反応としてアルコール酸化についても検討を行った。C-NカップリングおよびC-Oカップリング反応は、可視光照射によって進行することを明らかとした。さらに比表面積の異なる酸化ニオブを調製し、比表面積の増加と活性の向上が概ね正の相関を持つことを示した。この結果は、我々がこれまで提案してきた活性錯合体経由の光励起機構の妥当性を支持する結果であり、酸化ニオブ光触媒の活性向上の指針を示すものである。活性の向上は将来的に流通系への展開を行うためには必須な要素の一つである。グリセロール酸化については、収率は低いものの反応が進行することを見出した。今後さらなる活性の向上を図る必要がある。さらに他のバイオマス関連物質の酸化反応への展開を図る必要がある。 本年度の検討で得られた結果は、光触媒的バイオマス変換ならびに流通型反応装置への展開を図る上で基礎的な知見であり、研究目的に合致したものである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、基本的な酸触媒反応(モデル反応)に対する活性を評価することでその光触媒機能を評価した。さらに比表面積増加による表面錯合体の濃度の増加とこれに伴う活性の増加を期待し比表面積を増加させた層状酸化ニオブを調製し、その影響を検討した。今後の研究では、 1)酸化ニオブ光触媒の活性をさらに向上させるため、助触媒の添加、反応条件の最適化を進める。 2)グリセロール酸化以外のバイオマス関連物質の選択酸化に適用し、その触媒機能を検討する。具体的には、乳酸,5-hydroxymethylfurfural の選択酸化を検討する。 3)アルコール酸化反応をモデル反応とし、連続流通式反応装置の構築ならびに反応成績の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
光源のランプ交換に関する購入費用に充当予定だった費用を優先度の高い他の機材の購入に充当したため、差額が繰り越しとなった。次年度、早急に光源のランプ交換を行う費用の一部に充当する。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度、光源のランプ交換を行う費用の一部に充当する。
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