研究課題/領域番号 |
26620149
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
小川 昭弥 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30183031)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 酸化反応 / 環境低付加 / 錯体触媒 / 水溶媒 / 分子状酸素 |
研究実績の概要 |
研究計画に従い、前周期遷移金属のバナジウムによる、水系酸化反応について検討した。多核の複核錯体としてポリオキソメタレートであるヘテロポリ酸に着目し、実験を行ったところ、アルコール酸化反応が中程度の収率で進行することが明らかとなった。さらに、銅錯体による酸化的イミン合成を行ったところ、水溶媒、過酸化水素酸化剤下において収率80%を超える反応系を見出し、国際雑論文掲載に至った。本反応系では工業的な展開が早道と考えられる過酸化水素水を用いており、しかも市販の30%のものを水溶媒でさらに薄めて用いているため、非常に安全な酸化反応系であると言える。これに加え、いまだ十分な検討を行っていない酸素ガスを用いた反応系や、空気を用いた酸化反応系にも引き続き挑戦している。これに加えて反応触媒となる銅錯体についても、いくつかの銅錯体のX線結晶構造解析に成功しており、収束精度が良いものについては、学会、報文を通して発表予定である。また、近年のLEDランプの発展を考慮して、光誘起酸化反応についても検討するため、ポルフィリン-バナジウム錯体を合成し反応を試みた。しかしながら触媒ポルフィリンが水溶媒に全く溶解しないためと考えられるが、現在、反応は進行ていない。そこで、工業的な展開を目指し、トルエンおよび回収性溶媒のベンゾトリフルオリド中での反応を行ったところ、中程度で酸化的イミン合成が可能であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
バナジウムでのアルコールの酸化反応について収率の向上が見られた。さらに、銅錯体を試みたところ、酸化的イミン合成において、水溶媒、過酸化水素酸化剤という、工業的にも環境低負荷の酸化反応系を見出すことに成功した。これはバナジウム錯体触媒を種々合成している中で発見した触媒によるもので、これまで様々に調べら尽くされてきた銅錯体の酸化反応への利用に対し、大きく研究領域を展開することが可能となった成果と考えている。さらに本学では有機EL、LEDランプを用いた植物生産など、光に着目していることから、酸化反応に適用したところ、光誘起酸化反応が可能であることが明らかとなり、しかも大量生産に十分に耐え得る反応系を構築しつつある。これらのことから、本研究は大幅に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究計画に従って、アジピン酸やフェノール合成に挑戦するとともに、本研究で新たに見つかったヘテロポリ酸系と光誘起反応系にも注力する予定である。また、研究推進の課程において、色素製造企業からの問い合わせがあり、現在、環境問題から国内では製造が困難となっているトリフェニルメタニウム系の色素について酸化的合成の可能性について実験を始めており、本研究成果の社会還元についても検討していく予定である。
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