研究課題/領域番号 |
26620150
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
保倉 明子 東京電機大学, 工学部, 教授 (20343569)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 金 / パラジウム / 白金 / 銀 / 単細胞藻類 / 放射光X線分析 / 化学形態分析 / 金属ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
本研究では,植物を用いる金属ナノ粒子の生成およびその機構の解明を目的としている。初年度は,浮遊液体培養法で増殖させた単細胞藻類Pseudococcomyxa simplexとChlamydomonas reinhardtiiに対して金,白金,銀,パラジウムの金属溶液を添加し,その蓄積性を評価した。 培養した藻類細胞P. simplexに塩化金酸溶液([Au] = 50 mg/L, pH~3.3)を添加したところ,24時間後には,32,000 mg/kg DWもの金が蓄積していた。このように金を蓄積した藻類の個々の細胞に対して,放射光X線マイクロビームを用いて大気下非破壊で元素分布を調べたところ,金は時間の経過に伴って細胞内に取り込まれていくことが示された。高輝度な放射光X線マイクロビームを用いることで,金を添加1分後の細胞内においても金の信号を検出することができた。一方,細胞内に蓄積された金の化学形態分析を行った結果,塩化金酸イオンとして添加した金(III)は,細胞内に取り込まれると金属状態の金(0)に還元されていることが明らかになった。添加溶液は赤く呈色していることから,金ナノ粒子の生成が示唆された。SEMで観察したところ,約5 μm程度の藻類細胞において,約50 nm程度の金ナノ粒子が形成されて多数分散していた。このように,単細胞藻類は金を高濃度に蓄積する能力を持ち,さらに細胞内では金ナノ粒子が容易に生成されることが実証された。 白金や銀,パラジウムを添加した場合でも,これら藻類細胞における高蓄積がみとめられた。細胞内に蓄積されたこれらの金属の化学形態について,現在解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有用メタルの蓄積性と金ナノ粒子の生成について知見を得ることができた。放射光X線マイクロビームを光源とする蛍光X線イメージングにより,細胞内部に金が取り込まれている様子が可視化された。パラジウムや白金についても同様に細胞内部に取り込まれていた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,単細胞藻類in vivoでの評価を行ってきたが,今後の実用化を見据え,細胞を凍結乾燥・粉砕した粉末試料や細胞破砕液からの抽出溶液試料を用いて,金属溶液との反応について検討する。 白金,銀,パラジウムについても,同様に研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は金属蓄積について定量的な評価を中心とし,次年度にはQuick-XAFSによる化学形態分析を実施する。それにあわせてXAFS測定容器を自作することにしたため,予算を繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
藻類と金属溶液を混合した直後からのXAFSスペクトルを取得するため,専用のセルを作成する。
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