初年度は,2種類の単細胞藻類<I>Pseudococcomyxa simplex</I>と<I>Chlramydomonas reinhardtii</I>に対して,金,白金,銀,パラジウムの金属溶液を添加し,その蓄積性を評価した。その結果,金,銀,パラジウムについて数万ppm(乾燥質量あたり)の蓄積量となった。白金については数千ppm程度となった。蓄積された金の化学形態について検討したところ,50 nm程度の金ナノ粒子として存在していることが明らかとなった。SEM像および放射光マイクロXRFイメージングにより,細胞に取り込まれている様子が可視化された。 最終年度では,細胞内に取り込まれたパラジウム,銀,白金の化学形態について解析を進めた。さらに単細胞藻類以外の植物シダ植物を用いたり,希土類元素や水銀など様々な元素の添加実験も実施した。 その結果,パラジウムは窒素原子が4つ配位したアンミン錯体のような化学形態で,単細胞藻類細胞内に取り込まれていることがわかった。パラジウムの場合にはナノ粒子は形成されていないが,細胞内に高蓄積されるという特徴は明らかである。 銀の場合には,添加条件によってはナノ粒子の生成が認められた。白金の場合には,いくつかの化学種が混在するため,定量的な評価をするために詳細な解析を行っている。 研究期間全体を通しての研究成果は以下の通りである。1.単細胞藻類を用いると,金ナノ粒子が細胞内で生成される。2.細胞内で生成された金ナノ粒子は比較的粒径が揃っており,およそ50 nm程度となった。3.金ナノ粒子は細胞内に取り込まれているため,凝集せず長期間にわたって安定に存在する。4.他の金属イオンでは金属ナノ粒子の生成は難しいが,条件を検討することで生成できる可能性はある。
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