研究課題/領域番号 |
26620151
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
佐々木 正秀 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究グループ長 (60357126)
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研究分担者 |
加我 晴生 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 主任研究員 (20356752)
清水 弘樹 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 主任研究員 (30344716)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | サスティナブルケミストリー / バイオマス / 化学原料化 / 水 / 二酸化炭素 |
研究実績の概要 |
「水熱反応で得られたオリゴ糖成分の二酸化炭素添加による分解挙動」 (1-1) オリゴ糖成分の調製:既存パーコレーター型反応装置を用いて基準調製条件で反応を行った結果、オリゴ糖成分(水熱反応生成物)と反応残渣との合計収率が83wt%となり、17wt%のロス分が観測された。これに関して詳細な分析を行った結果、ロスは水熱反応過程で生成した低分子成分(フルフラール等)が凍結乾燥時に除去されたのが原因であった。そこで、水熱反応過程で過分解(低分子成分の生成)を抑制するために、昇温速度を20°C/minから5°C/minに変更し、反応過程でのロス分をほぼゼロにすることに成功した。 次に、水熱反応生成物(オリゴ糖成分)を効率的に製造するために、1/4 inchベースのパーコレーター型反応装置を製作し、上記の条件で反応試料の調製を行った(水熱反応物収率は55wt%)。この反応物のHPLC分析結果、検出される成分の94%がオリゴ糖であった。さらに、この水熱反応生成物を4%硫酸により加水分解(121°C, 60min)を行った結果、単糖収率は57wt%で主成分はキシロースであった。 (1-2) 水熱反応生成物(オリゴ糖成分)の二酸化炭素添加による分解挙動:(1-1)で得られた水熱反応生成物を反応物として、二酸化炭素添加によるオリゴ糖成分分解挙動について検討した。反応条件は40°C/min, 200°C, 6minで行った。その結果、単糖収率は、それぞれ51wt%(酢酸/窒素系)、15wt%(水/二酸化炭素、窒素系)、10wt%(水/窒素系)であった。二酸化炭素添加系では無添加(水/窒素系)に比べ加水分解は進行しているが、酢酸に比べる低い値を示した。このことは、超臨界二酸化炭素はオリゴ糖の加水分解に効果はあるが、本実験条件では反応が充分に進行していないことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「水熱反応で得られたオリゴ糖成分の二酸化炭素添加による分解挙動」 (1-1) オリゴ糖成分の調製:既存パーコレーター型反応装置による水熱反応条件の設定を行い、昇温速度を制御することにより、反応過程で起こる過分解反応(低分子成分の生成)を抑制することに成功した。また、水熱反応生成物(オリゴ糖成分)の効率的製造のため、スケールアップした反応装置を製作し、従来よりも約7倍(1.7g)の反応物を処理することが可能となった。得られた水熱反応生成物(オリゴ糖成分)の性状を明らかにするとともに、硫酸による加水分解反応により単糖生成可能成分量を明らかにした。 (1-2) 水熱反応生成物(オリゴ糖成分)の二酸化炭素添加による分解挙動:(1-1)で得られた水熱反応生成物を反応物として、二酸化炭素添加によるオリゴ糖成分分解挙動についてバッチ式反応装置を用いて検討した結果、以下のことが明らかになった。超臨界二酸化炭素はオリゴ糖の加水分解能を有するが、酢酸などの有機酸に比べその能力は低い。これは加水分解条件(反応温度、保持時間)を変更することで、十分対応可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度行った水熱反応条件では、反応残渣が約40wt%得られ、この反応残渣にも単糖生成可能成分が含まれることが明らかになっている。硫酸加水分解法と比較し本プロセスの有効性を示すためには、反応物であるオリゴ糖成分は試料の竹に含まれるセルロース及びヘミセルロース由来成分をすべて含んでいる必要がある。 そこで平成27年度は、試料に含まれるセルロースおよびヘミセルロース由来成分のほとんどを可溶化できる水熱反応条件の探索を行う。その際、反応による過分解を極力抑えなければならない。具体的には、比較的低温で有機酸共存下での水熱反応を行い、目的としている水熱反応生成物を調製する。これまでの予備的検討の結果、酢酸共存下での水熱反応は比較的低い温度で残渣の効率的分解および過分解の抑制に効果があることが明らかになっている。 上記の方法で調整した反応物に対して、バッチ式反応装置によりオリゴ糖成分の分解に及ぼす二酸化炭素の添加効果を明らかにするとともに、加水分解に最適な条件を探索する。その結果を基に、平成27年度の研究計画記載の既存パーコレーター型反応装置の超臨界二酸化炭素導入のための仕様変更を行い、連続反応実験を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は基本的に既存反応装置を用いて検討を進め、かつ水熱反応装置のスケールアップに関しても、比較的低予算で行うことができたので、予算額を下回る金額で、目標とした実験を遂行することができた。また、使用した内国旅費も近郊であったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度では、バッチ式反応装置の結果を基にパーコレーター型反応装置の改造を予定しているが、バッチ式反応装置の結果次第では、パーコレーター型反応装置の加水分解部の設計変更(反応器長の変更および加熱部分の拡大)が想定される。次年度使用額はこの部分に使用する予定である。
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