研究課題/領域番号 |
26620153
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤田 健一 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (80293843)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イリジウム触媒 / 脱水素化反応 / 機能性配位子 / 天然有機資源 / 水素 |
研究実績の概要 |
本研究は、研究代表者がこれまでに開発してきた、有機化合物の脱水素化を水中で実現する触媒系を発展させ、より高性能な脱水素化錯体触媒を設計・合成するとともに、再生可能な天然有機資源から高効率的に水素を製造する触媒系を開発することを目的として遂行している。 本年度はまず、機能性含窒素複素環カルベン配位子を有し、水に易溶なイリジウム錯体の合成に取り組んだ。その結果、イミダゾリウム塩由来の含窒素複素環カルベン部位と2-ヒドロキシピリジン部位とを連結した機能性配位子を有し、ジカチオン性で水への溶解度が高いイリジウム錯体を得ることができた。そして、得られた錯体の構造をスペクトルデータ解析ならびに単結晶X線構造解析によって明らかにした。本錯体は、研究者がこれまでに開発してきた錯体触媒と同様、水溶媒中でのアルコールの脱水素的酸化によってカルボニル化合物を与える反応において高い触媒活性を発現した。 また、上記以外の新しい機能性配位子の合成にも取り組んでおり、シクロペンタジエニル配位子と機能性の2-ヒドロキシピリジン骨格とを連結した配位子の合成を進めているところである。 続いて、再生可能な天然有機資源からの水素製造反応についても調査した。グルコースの水中還流条件下における脱水素化反応について、水溶性イリジウム錯体触媒を用いて検討したところ、最大95%の収率で水素を得ることに成功した。またこのとき、最大の触媒回転数は約400に達した。さらに、グルコース以外の単糖類の脱水素化による水素製造にも成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の当初の研究実施計画は、(1)機能性含窒素複素環カルベン配位子を有する水溶性イリジウム錯体の合成、(2)機能性テザー型シクロペンタジエニル配位子を有する水溶性イリジウム錯体の合成、(3)グルコースの脱水素化触媒系の開発、であった。このうち、(1)については計画どおりに進展した。(2)については、現在合成途上にある。また、(3)については、当初の計画を上回る成果が得られ、グルコース以外の天然資源からの脱水素化についても明らかにできた。以上を総合して、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度も当初の研究実施計画にしたがって遂行していくが、脱水素化による水素製造に用いる基質として、当初計画していたグルコース、グリセロール、セルロース等だけでなく、天然資源から容易に得ることができる低炭素数のジオール(エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール等)にも拡張して検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、従来から当研究室が所有していた試薬やガラス器具等を有効活用したため、物品費の執行額を抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記により生じた次年度使用額は、主として試薬、ガラス器具、ガスボンベ等の物品費(消耗品費)の購入に充てる予定である。 また、平成27年度に交付を受ける経費については、当初の計画どおりに執行する予定である。
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