研究実績の概要 |
架橋ポリスチレン(PSt)粒子の膨潤-収縮挙動に着目して蛍光粒子を短工程かつ簡便に、光合成系-光捕集アンテナ系を分子-高分子複合システムを使って模倣するという観点にたち、~1000μmの超長距離フェルスター型共鳴エネルギー移動(LR-FRET)を可能にするμmサイズのポリマー微小球からなるシステム構築に挑戦した。 (a) エキシマー発光性を与えるピレン単量体、アルキレンスペーサーで連結されたピレン二量体を蛍光プローブとし、粒径、PSt架橋率、架橋度の均一度や粒径内分布を同定した。ピレン単量体/二量体を含有したPSt粒子を用いたPLスペクトルから、4%架橋度PSt粒子ではエキシマー発光が認められないことから、ピレンの再配列が起きないことが示された。励起波長選択的な架橋PSt微粒子の断面蛍光イメージと蛍光スペクトル測定から、架橋率(1,2,4%)によって、ピレン発光スペクトルと2次元蛍光分布が存在した。高架橋率PSt粒子ではピレン分子は粒子表面付近に局在し、低架橋率PSt粒子ではピレン分子がほぼ一様に分布していた。 (b) ポリスチレン架橋率、D/A系ビチオフェン誘導体の選択と溶液濃度を最適化したフェルスター型エネルギー移動実験を行った。D(紫外吸収-青色発光)を1%架橋PSt粒子(直径60μm)に、A(青色吸収-赤色発光)ビチオフェンを4%架橋PSt粒子(直径96μm)にそれぞれドープし、キャピラリー中で粒子間接触させた。365nm励起光による蛍光顕微鏡観察と顕微蛍光分光器観測により、D系ビチオフェンをドープした架橋PSt粒子からA系ビチオフェンをドープした架橋PSt粒子への共鳴エネルギー移動の兆候が認められたものの、超長距離フェルスター型共鳴エネルギー移動が起きているとは明瞭に断言できなかった。
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