研究課題/領域番号 |
26620156
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久枝 良雄 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70150498)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コバルト錯体 / イミン/オキシム型配位子 / 水素生成 / 酸化チタン / バイオマス / 二核錯体 / ヒドリド錯体 / 酸化還元 |
研究実績の概要 |
本研究では、新規コバルト二核錯体を触媒として用い、超高効率な水素生成系を構築することを目的としている。コバルト二核錯体を分子設計し、二分子機構により水素発生効率を格段に上げる点が独創的な点である。水素生成系としては2つの手法を検討する。一つは、『酸化チタン-コバルト錯体-バイオマスの組合せにより、光駆動型の水素生成系を構築』する。電子源にバイオマスを用いる点が特色である。二つ目は、『電気エネルギーを水素として貯蔵するために、コバルト二核錯体をメディエーターとしてプロトンを電解還元』する系である。両者の系はコバルトヒドリド錯体を経由して水素を生成する点が特徴であり、高効率な水素生成の新反応機構を提案したい。 今年度は、モノアニオン性であるイミン/オキシム型配位子を合成した。これは、ジアニオン性配位子よりモノアニオン性配位子を有するコバルト錯体は、温和な条件で活性なCo(I)種を生成するからである。単核錯体および新規な二核錯体を合成し、酸化還元挙動を明らかにした。次に、酸化チタンとコバルト錯体の組合せにより水素生成系を構築した。すなわち、酸化チタンに紫外線照射することによりホール(h+)と励起電子(e-)ができる。電子源として、グルコースなどの糖類またはセルロースのようなバイオマスを用いた。励起電子はコバルト錯体を還元する電位を有するので、Co(I)種が生成した。このCo(I)種が水中のプロトンと反応しヒドリド錯体を形成し、水素を生成したと推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、コバルト錯体を触媒として用い、超高効率な水素生成系を構築することを目的としている。コバルト二核錯体を分子設計し、二分子機構により水素発生効率を格段に上げる点が独創的な点である。水素生成系としては2つの手法を検討する予定である。一つは、『酸化チタン-コバルト錯体-バイオマスの組合せにより、光駆動型の水素生成系を構築』する。二つ目は、『電気エネルギーを水素として貯蔵するために、コバルト二核錯体をメディエーターとしてプロトンを電解還元』する系である。 二核錯体の合成に成功し、水素生成系の2つの手法のうち、酸化チタン-コバルト錯体-バイオマスの組合せによる水素生成に成功した。従って、計画通りに進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、二つ目の『電気エネルギーを水素として貯蔵するために、コバルト二核錯体をメディエーターとしてプロトンを電解還元』する系を実施する予定である。平成26年度に行った『酸化チタン-コバルト錯体-バイオマスの組合せによる光駆動型の水素生成系』と結びつけることにより、コバルトヒドリド錯体を経由した高効率な水素生成の新機構を提案したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費として、平成27年度に薬品や電気化学測定に必要な経費が予想されたので、試薬やガラス器具などの消耗品代を節約した。また、海外の国際会議での発表などは、研究成果が出揃う平成27年度の方が適切であると判断し、旅費についても使用を押さえることにした。
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次年度使用額の使用計画 |
海外での研究成果の発表を優先し、海外旅費に使用する。また、研究成果を更に発展させるため、試薬・溶媒・ガラス器具などの物品費に使用する。
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