研究課題
本研究では、コバルト単核錯体および二核錯体を用い、高効率な水素生成システムを構築することを目的とした。水素生成系としては2つの手法を検討した。(1)酸化チタン-コバルト錯体-バイオマスの組合せにより、光駆動型の水素生成系を構築した。電子源にバイオマスを用いる点が特色である。(2)電気エネルギーを水素として貯蔵するために、コバルト二核錯体をメディエーターとしてプロトンを電解還元した。両者の系はコバルトヒドリド錯体を経由して水素を生成する点が特徴であり、コバルト二核錯体を用いた二分子機構による高効率な水素生成の新反応を期待した。昨年度は、イミン-オキシム型二核コバルト錯体を合成し、酸化チタンとの組合せによる水素発生を行った。今年度は、電気エネルギーを水素として貯蔵するための検討を行った。余剰電気を水素として貯蔵するための触媒システム、すなわちプロトンを電解還元して水素を生成するシステムを検討した。プロトンを電解還元して水素を生成する場合、プロトンの還元電位よりも負に大きな電位(過電圧)が必要であり、効率的な電解システムが求められる。そこで、過電圧を抑え、効率的に水素を発生するために金属錯体をメディエーターに用いた。本研究では、イミン/オキシム型の配位子を有するコバルト錯体を用いた。平成26年度に合成した二核錯体を主体としてプロトンの電解還元を行った。まず、コバルト錯体とプロトン(TFA:トリフルオロ酢酸)を含む溶液中でサイクリックボルタモグラム(CV)を測定し、酸化還元特性を明らかにした。次に、CVの結果から水素発生の電位を決定し、電解セルを用いて定電位電解を行った。電解開始後、一定時間毎に作用極側の気相をガスタイトシリンジでサンプリングし、生成した水素をガスクロマトグラフ法により定量した。単核錯体および種々の二核錯体を用いて実験を行い、反応機構を推察した。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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