前年度、酸化チタン(TiO2)表面上にゲルマニウムポルフィリン錯体(Getpp)を吸着させた複合電極と白金電極から構成される電池系において、脂肪族アルコール類(モノオール、ジオールおよびトリオール)を電子源とした短絡光電流が得られることを明らかにしている。 今年度は、光電流発生機構を明らかにするために、酸化電位が系統的に変化できるパラ置換ベンジルアルコール誘導体を電子源として、酸化電位を光電流との関係を検討した。その結果、2種類の傾きを持つ直線関係が得られ、光電流の発生には2つの異なる機構が存在することがわかった。Getppの酸化電位から、光電流の発生には、Getppラジカルカチオンへの電子移動機構によるものとGetppオキシル錯体からの水素引き抜き機構によるものであることが明確になった。次に安価な電子源として、鉄2価イオンを電子供与体とし、鉄3価イオンを電子受容体とした電解液を用いて光照射すると、光電流に対するエネルギー変換効率が0.15%となることがわかった。これは、これまでアスコルビン酸を電子源として用いた場合の最高値とほぼ同じ値であることから、鉄イオンの酸化還元メディエーターを用いることでも、効果的な光電池として機能することを明らかにした。また、電解質の種類についても検討し、カウンターアニオンがBF4-の場合が最も高い光電流がえられることもわかった。 さらに、電解水溶液のみでも、短絡光電流が観測され、陰極側では、水の二電子酸化生成物である過酸化水素が生成していることがわかった。このことは、Getppには水も電子源として組み込むことができる機能を有していることを示唆している。 以上のことから、本光燃料電池は、電子源としてアルコール類、バイオマス関連物質であるグリセロールおよび鉄イオンが有効であることがわかった。
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